会社法務, 会社運営

取締役を解任するとき・取締役が解任されそうなとき、それぞれの留意点 完全ガイド

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 取締役が不正な行為を行っている場合や法令違反の行為をしている場合はもちろん、取締役として期待された能力を十分に持っていなかったり、職務怠慢があり、任期満了前であっても会社の取締役の地位から退いて欲しいという事態には、会社経営者であれば必ず遭遇します。

 逆に、取締役として登用され、会社に貢献してきたのに、経営者とそりが合わないなどの理由から、会社から取締役の地位を解任され、会社を追われるという事態も我々は何度も目にしてきました。

   会社経営者としては、情に流され、特定の取締役を辞めさせることは避けたくても、会社を守るためにそのような決断をしなければならないケースもあります。会社から退いてもらうという方針が決まっているのであれば、即座に対処しなければなりません。

 しかし、法的に適切な対応方法を知っておかなければ、長期間の訴訟・紛争に発展し、会社も取締役も共倒れになってしまうことすらあります。
 経営者として会社を守るため、取締役の解任方法を巡る留意点について知っておくことが必要です。本記事では、①会社が特定の取締役を解任する場合に、将来の紛争を防止し、紛争になったとしても有利な解決ができるようにするための具体的な対処方法と、逆に、②取締役として、解任されそうな事態になった場合に、どのような対応方法があるかについて、ご紹介をします。ぜひ参考にしてください。

1、取締役を解任するにはどうすればよいか?

 

1-1 株主総会での決議が必要だが、取締役に非がなくても解任できる

1-1-1 株主総会の決議さえすればよい

 取締役の解任とは、会社側が一方的に、取締役の地位をはく奪することをいい、取締役が解任されることについて同意していなくとも、その効力が認められます
 取締役を解任する方法は、会社法に定めがあり、原則として、株主総会の決議をする必要があります(会社法339条1項)。
 すなわち、50%を上回る議決権を有する株主が出席し、出席した株主の過半数が、取締役の解任に賛成すれば、取締役は解任されることになります。したがって、50%を超える会社の株式(議決権)をコントロールできるのであれば、取締役を解任することはできるのであり、その取締役の能力が不足しているとか、職務怠慢があったなどの理由は必要ではありません。 
会社法339条1項 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

1-1-2 「正当な理由」がないのに解任をすれば、会社が損害賠償責任を負う

 取締役に非がなかったとしても、株主総会の決議さえ経れば、取締役の解任は有効に成立します。
 しかし、会社法339条2項は、解任について、正当な理由がなければ、当該元取締役は会社に対して損害賠償請求をすることができると定めています。
会社法339条2項 解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。 
 どのような場合であれば「正当な理由」があるといえるのか、整理をすれば次のようになります(東京地方裁判所商事研究会編「類型別会社訴訟Ⅰ〔第三版〕」24頁)。
「正当な理由」ありと判断されやすい場合

  • 心身の故障がある場合(最高裁昭和57年1月21日判決)
  • 法令、定款違反の行為をした場合(例えば、①取締役会の承認なく競業行為を行ったり、会社から借入をした、②横領や背任により会社に損害を与えたような場合)
  • 職務遂行能力を著しく欠くなど、職務への著しい不適任がある場合
  • 経営判断の失敗
「正当な理由」なしと判断されやすい場合

  • 代表取締役や株主が、その取締役を気に入らない(折り合いが悪い)
  • ほかに適任者がおり、その者を取締役に迎え入れるため、代わりに解任したい  
 さらに、「正当な理由」がない場合に、解任された取締役が会社に対してする損害賠償として何を請求できるかは、任期満了まで取締役として務めていれば、得られたであろう報酬、退職金などが考えられます。
 

1-2 株主総会で否決されても、解任の訴えにより解任することができる

 株主総会で多数決の賛成を得て、取締役を解任するというのが正攻法です。
 しかし、取締役が不正行為をしていたにもかかわらず、これを解任するための株主総会決議で多数派工作に失敗し、解任議案が否決されてしまう場合もあり得ます。
 そのような場合に備え、会社法は、多数派を形成できない株主であっても、不正行為をした取締役を放逐するための制度として、役員の解任の訴えというものを設けています(会社法854条1項)。
 
会社法854条1項 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
 イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
 ロ 当該請求に係る役員である株主
発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
 イ 当該株式会社である株主
 ロ 当該請求に係る役員である株主
 これは、株主総会の決議を経るのではなく、訴訟において、特定の取締役を解任するという判決を得ることを目的とするものです。会社法854条1項が定める、解任の訴えが認められるための原則的な要件は、次の4つです。
  1. 取締役の職務執行に関して、不正行為、法令・定款違反の行為があったこと
  2. そうであるにもかかわらず、株主総会において、解任議案が否決されてしまったこと
  3. 解任の訴えを提起する者が、3%以上の議決権(株式)を保有していること
  4. 解任議案を否決した株主総会開催日から、30日以内に解任の訴えが提起されること
 以上のとおり、法的には、①株主総会の決議により、いつでも取締役を解任することができる、②ただし、解任に「正当な理由」がない場合には、元取締役は会社に対して損害賠償請求をすることができる、③株主総会決議で、取締役の解任が否決されても、解任の訴えという方法がある、というルールをまず理解してください。
 
 次からは、より具体的に、50%を超える会社の株式(議決権)をコントロールできる場合に、安全に解任を進める方法と、50%超のコントロールができない場合に検討すべきこと、さらに、解任に追い込まれそうな取締役としてはどうすべきかについて、検討をしていきます。

 2、50%を超える会社の株式(議決権)をコントロールできる場合の解任の進め方

2-1 自由に解任ができるが、解任は最後の手段。辞任を求めるのが原則

2-1-1 解任よりも、辞任の方が、圧倒的に会社のリスクは少ない

 50%を超える会社の議決権をコントロールできる場合、株主総会の手続さえ踏めば、自由に解任ができることになります。
 しかし、解任はあくまで最後の手段であり、まずは、当該取締役を説得して辞任を求めるのがよいでしょう。「解任」の場合には、会社の商業登記簿謄本にその旨が記載されてしまい、あまり見栄えがよくないということも理由の一つですが、それ以外にも、次のとおりですが、辞任と解任では、会社が後に紛争に巻き込まれるリスクの程度が大きく異なるのです。
  • 解任の場合、当該取締役から、株主総会の解任決議の効力を訴訟(あるいは仮処分)で争われる可能性があること
  • 解任の場合、解任の「正当な理由」がないとして、会社が損害賠償請求を受ける可能性があること
  • 辞任であれば、取締役が自ら辞任届を作成した以上、これを後から覆すことは極めて困難であり、紛争になりにくいこと、また、紛争になっても会社に有利であること

2-1-2 解任ではなく辞任を求めるに当たっての交渉材料

 取締役に対して、辞任を求めるに当たっては、辞任に応じるインセンティブを与える必要があり、会社にとっては、例えば以下の事項が交渉材料として考えられます。
  • これまでの不正行為について、会社が刑事告発をしないこと
  • 不正行為により会社が被った損害の賠償について、その一部を免除すること
  • 当該取締役が株式を保有している場合に、通常よりも高めの金額で株式を買い取ること
  • 解任の場合であれば、退職慰労金を不支給とするが、辞任に応じれば、一定の退職慰労金を支払うこと

2-1-3 辞任の場合に、忘れてはならないこと(辞任して終わり、ではない)

 取締役が辞任に応じることになった場合、辞任届を作成します。辞任届には、特に様式はありませんが、辞任届ひな形をご紹介しておきますので参考にしてください。
辞任届作成後は、当該取締役の辞任の登記をしておくことが不可欠です。
 これに加えて、当該取締役が株式を保有していた場合には、他の取締役等が、これを買い取っておくべきでしょう。少数であっても、株式を保有している場合、株主として会社に対して色々な権利行使ができるため(取締役会議事録の閲覧・謄写請求(会社法371条2項)、株主総会の招集請求(会社法297条4項)など)、元取締役により、これらの権利が濫用されることを防ぐためです。
 また、取締役との間で、競業避止義務を課す合意書(誓約書)を交わしておくべきでしょう。退任する取締役に競業避止義務を負わせる合意書(誓約書)の作成方法に関しては、【退職者に競業避止義務・秘密保持義務を課す合意書のポイント】を参考にしてください。
 

2-2 株主総会決議で解任をする場合、紛争を防止するため、会社法が定める手続に沿って進めることが重要

2-2-1 解任決議をした株主総会の手続に問題があると、会社にとってどんな危険があるか?

 株主総会の「招集の手続」が法令・定款に違反している場合、株主や取締役は、株主総会決議の取消しの訴えを提起することができます(会社法831条1項)。株主総会決議の取消しの訴えが提起され、「招集の手続」に違反があったとして、決議を取り消す判決が確定した場合には、株主総会の決議は効力を失います。そのため、特定の取締役を解任する株主総会決議をしても、その招集手続に違法があれば、解任が無効となる可能性があるのです。
 
会社法831条1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。 
 解任された取締役側としては、株主総会の招集手続に違法がある場合、株主総会の決議取消しの訴えを提起するとともに、役員の地位を仮に定める仮処分という申し立てを裁判所にするのが通常です。
 解任された取締役が、株主総会決議取消しの訴えを提起して、勝訴判決を得れば、解任は無効となりますが、判決を得るまでには相当な期間がかかります。役員の地位を仮に定める仮処分とは、(判決で)株主総会決議が取り消される可能性が高いという場合に認められるもので、これが認められると、判決が出る前であっても、「仮に」その者が法的に取締役の地位にあるものとして扱われるということになります(仮処分手続の簡単な解説については、退職者が競業避止義務に違反している場合の解決法 完全ガイドの「仮処分とは?」もご覧ください。)。
 解任決議をした株主総会に関して、「招集の手続」違反がある場合には、この仮処分が認められる可能性が相当に高くなります。これが認められてしまうと、解任しているはずの取締役が、「仮」とはいえ、取締役に復帰することになり、報酬請求権もあることになりますし、取締役会に出席して発言する権利(義務)も認められることになります。
 辞めさせたはずの取締役が会社に出てきて、従前と同じように業務をしているという状況は、少なからず社内に混乱を招きますし、会社の運営に重大な支障が生ずることは明らかです。
 ですから、会社としては、このような仮処分を避けるために、株主総会の手続をしっかり踏む必要があるのです。普段は株主総会を開催していなかったり、法定の手続を踏まずに開催しているような会社は多くありますが、このときばかりは、注意が必要です。
 
 以下では、よく見落とされがちな招集手続を中心として、適法に株主総会決議を成立させるための流れを確認しましょう。
 

2-2-2 解任決議までの流れ(原則)

 まずは、取締役会が設置されている一般的な株式会社において、株主総会を招集して、解任の決議をするまでの流れをご紹介しますが、留意点は以下のとおりです。
2-2-2-1 取締役会の決議による株主総会の招集決定
 まず、株主総会を適法に招集するには、取締役会で株主総会の招集を決定する必要があります。取締役会で、株主総会の招集を決定するまでの流れは次のとおりです。
“取締役会の招集” ポイントは次のとおりですが、解任をする取締役に対しても、取締役会の招集を通知する必要がある点に留意してください。

  • 招集のタイミング:取締役会開催予定日の1週間前(会社法368条1項)(ただし、定款により「3日前」等としているような場合は、それに従えばよい。)
  • 招集の方法:各取締役に対して、招集通知を発送する。招集通知は、口頭でもよいが、証拠を残すために、メールか書面が望ましい。
  • 招集通知に記載すべき内容:取締役会の開催日時・場所(議題は記載しなくてもよい)
2-2-2-2 取締役会の決議  
 普段、正式な取締役会を開催していない会社であっても、後から手続の正当性を争われないためには、実際に取締役会を開催する必要があります。
 取締役会の決議は、議決に参加できる取締役の過半数が出席し、さらにその過半数の同意がある場合に有効に成立することになります(会社法369条1項)。
 過半数の取締役の出席というのが重要ですが、遠方に出張中のために出席できない等の場合であっても、テレビ電話やスカイプでの参加でも、出席と認められます(代理人による出席は認められません。)。
 招集手続が適法にされたことを証明するため、取締役会議事録を作成しておく必要があります(会社法369条3項)。取締役解任の株主総会招集を決議した議事録のひな形(取締役会議事録(株主総会招集))を用意しましたので、参考にしてください。
 なお、解任される取締役が、取締役会議事録への署名押印を拒否したとしても、その他の出席取締役で可決要件を満たしている場合には、出席者のみが署名押印をした議事録を作成することで問題ありません(署名押印を拒否した取締役については、議事録に、その旨を記載しておきますが、上記ひな形はその記載をしたバージョンです。)。
会社法369条1項 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
会社法369条3項  取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 
2-2-2-3 株主総会の招集
 株主総会の招集は、代表取締役の名義で、招集通知の書面を発送する方法により行います(会社法299条1項及び2項)。
 株主総会招集通知は、法定の記載事項を漏れなく記載する必要があり、中小規模の取締役会設置会社において、取締役解任の臨時株主総会を招集する通知のひな形(株主総会招集通知ひな形) を用意しましたので、参考にしてください。
 なお、株主総会の招集通知の発送日と、株主総会の開催日の間は、7日以上空けなければならず(公開会社でない場合。会社法299条1項)、株主総会開催日の設定には注意が必要です。
会社法299条1項 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
会社法299条2項 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
株式会社が取締役会設置会社である場合
 例えば、3月1日に取締役会を招集したとして、株主総会開催までの最短のスケジュールは次のようになります(取締役会の招集に関して、取締役会招集の通知を、取締役会開催日の「3日前」までと定めている、非公開会社を想定しています。)。  
  • 3月1日:取締役会の招集
  • 3月5日:取締役会開催、株主総会招集通知発送
  • 3月13日:株主総会開催
2-2-2-4 株主総会の決議
 取締役会と同様、普段、正式な株主総会を開催していない会社であっても、後から手続の正当性を争われないためには、実際に開催する必要があります。
 取締役を解任する株主総会決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成が必要になります(会社法339条1項、309条1項)。50%以上の議決権をコントロールできているのであれば、確実に解任決議を成立させることができますが、出席できない者が現れるリスク等を考え、事前に、委任状を取得しておくことも検討すべきでしょう。委任状のひな形はこちら をご参考にしてください。
 株主総会決議が成立したら、取締役会決議と同様、株主総会議事録を作成します。こちらも、法律により記載事項が定められています。これについてもひな形を準備しましたので、こちらを参考にしてください。
 

2-2-3 議決権の100%をコントロールできるのであれば、以上の手続の多くを省略できる

 これまで、株主総会決議を適法に成立させるための、細かい手続について触れてきました。
 もっとも、議決権の100%をコントロールできる場合、例えば、創業者がすべての株式を保有しているような場合は、多くの手続を省略できます。
 すなわち、このような場合には、実際に株主総会を開くまでもなく、書面の作成のみで決議があったものとみなす制度があります(みなし決議)。取締役又は株主が議案を提案し、それについて、株主の全員が書面で同意をすれば、当該提案は可決したものとみなされます(会社法319条1項)。
会社法319条1項 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。 
 株主総会を開催しない手続ですが、議事録の作成が必要ですので、これに関するひな形を用意しました。こちらを参考にしてください。
 

2-3 取締役解任後の対応(取締役の責任追及)

 取締役を解任した後、当該取締役からは、会社の共有サーバーにアクセスできるパソコンや、会社のカギ等の返還を受ける必要があります。
 また、在任中に、当該取締役に法令違反や不正行為等があった場合には、取締役の責任追及として、会社は、損害賠償請求の訴訟提起を検討することになります(会社法423条1項)。
 

3、50%を超える会社の株式(議決権)をコントロールすることが容易でない場合の解任の進め方

 3-1 株主総会決議により解任するのではなく、解任の訴えにより、解任することを目指すことになる

  50%を超える議決権をコントロールすることが難しい場合、株主総会で解任の決議を成立させることができません。
 そのため、この場合には、株主総会決議ではなく、解任の訴えを提起して、判決によって解任をするということが必要になってきます(会社法854条1項)。もっとも、解任の訴えを提起して判決を得るためには、先ほど述べたとおり、次の4つの要件をクリアする必要がありました。 
  1. 取締役の職務執行に関して、不正行為、法令・定款違反の行為があったこと
  2. そうであるにもかかわらず、株主総会において、解任議案が否決されてしまったこと
  3. 解任の訴えを提起する者が、3%以上の議決権(株式)を保有していること
  4. 解任議案を否決した株主総会開催日から、30日以内に解任の訴えが提起されること

3-2 取締役会で株主総会の「招集」が決議されない場合もある

 解任の訴えが認められるための要件のうち、2つ目、「株主総会において、解任議案が否決されてしまったこと」に着目してください。
 解任の訴えを提起できるのは、あくまで、取締役解任のために株主総会を開催したのに、解任の議案が否決されてしまうことが必要とされています。既に述べたように、株主総会を招集するには、原則として、取締役会で総会招集の決定を決議しなければなりません。しかし、取締役の多くが、解任対象の取締役をかばって、取締役会の決議を成立させることができず、株主総会の招集ができないこともあり得ます。
 
 このような場合には、以下の2つの要件を満たす株主は、会社に対して直接、株主総会の招集を請求することができます(会社法297条1項)。しかし、それでも、代表取締役が株主総会を招集しない場合には、その株主は、裁判所の許可を得て、自ら、株主総会を招集することが認められています(会社法297条4項)。 この手続をとれば、取締役会の決議を経ることなく、適法に株主総会を招集することができます。
株主が株主総会の招集をするための要件2つ

  • 当該株主が、3%以上の株式(議決権)を有していること
  • 6か月間継続して、3%以上の株式(議決権)を保有し続けていたこと

 

会社法297条1項 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
会社法297条4項 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

3-3 解任の訴えの提起と、仮処分の申立て

 株主総会の開催日から30日以内に、解任の訴えを提起する必要があります。
 しかし、解任の訴えで勝訴判決を得て初めて、解任の効力が生じることになりますので、判決までの間、解任対象の取締役が業務を執行し続けることになります。そこで、ここでも、判決が出るまでの「仮」の判断を求めるために、仮処分手続を利用するのが通常です(仮処分手続の簡単な解説については、退職者が競業避止義務に違反している場合の解決法 完全ガイドの「仮処分とは?」もご覧ください。)。
 この場合、当該取締役の職務執行を「仮に」停止することを求める、仮処分を申し立てることになります。裁判所より、これを認める仮処分の決定が出た場合には、その取締役の職務の執行は停止されることになります。
 

4、代表取締役を解任する場合の留意点

 解任対象の取締役が、代表取締役である場合も、手続は基本的には同じです。
 しかし、代表取締役は、50%以上の株式を単独でコントロールできる場合が通常です。仮に、解任の訴えで勝訴したとしても、(元)代表取締役が株主総会において、株主としての権利を行使して、自身を取締役として選任することは当然可能ですし、根本的な解決にはなりません。
 したがって、50%以上の株式を単独でコントロールする代表取締役を解任することは現実的には困難と言わざるを得ません。
 この場合、辞任を求めるとともに、株式譲渡の交渉をする方向で検討する必要があります。
 

5、取締役として、解任されそうになった場合

 ここでは、これまでとは逆に、取締役が解任されそうになった場合の取締役側の留意点について簡単に触れたいと思います。
 基本的には、会社が進めている流れに乗らないというのが重要です。
 まず、会社としては、辞任に加えて、取締役が保有している株式の譲渡を求めてくるはずですが、これに応じると、その後に争うことが非常に難しいため、辞任に応じるメリットを見極め、慎重に検討しなければなりません。
 辞任を拒否し、株主総会の決議で解任されてしまった場合に、あくまで、会社と戦っていくのであれば、解任の効力を争うか、会社に対して損害賠償請求をしていくことが考えられます。
 まず、既に述べたように、株主総会の招集手続に問題があるような場合、取締役としては、株主総会決議の取消しの訴えを提起するとともに、自身が取締役の地位にあることを「仮に」確認する仮処分を申し立てることが考えられます。
 しかし、当該株主総会の招集手続に問題があったとしても、再度、手続を踏んだ上で、株主総会を開催され、解任決議が有効にされてしまうと、これを争うことは非常に難しくなります。

 このような場合には、「正当な理由」がないのに解任がなされたことを理由に、会社に対して、本来の任期満了まで取締役の地位にあれば得られたであろう経済的な利益分について、損害賠償請求をしていく戦い方があります(会社法339条2項)。

6、まとめ

 取締役を解任する場合に重要なことは、紛争になることを防止すること、さらには、紛争になったとしても有利に解決することができるように準備をすることです。
 そのためには、まずは、取締役と話し合いの上で、辞任に応じるよう説得することが第一であり、それが難しい場合には、株主総会で解任の決議をすることになりますが、そこでは、手続上のミスがないように勧めることが重要でした。
 また、確実に株主総会での決議を得るべく、株主から事前に同意を取り付けておくことも重要です。
 
【ポイント】
  • 取締役を解任するためには、株主総会の決議さえあればよく、その場合には、特に解任のための正当な理由は求められない
  • ただ、解任に正当な理由がない場合には、事後的に、取締役から損害賠償請求をされる可能性がある
 【解任をする側の対応】
  • まずは、取締役に辞任をうながし、可能な限り、解任ではなく辞任で決着をつける
  • 辞任の際には、株式を手放させるとともに、競業避止義務に関する合意書(誓約書)も同時に交わしておく
  • 辞任に応じない場合には、株主総会の決議で解任することになるが、その際は、法律上の手続を遵守する
  • 株主総会決議が否決された場合には、解任の訴えの提起と、仮処分の申立てを検討する
 【解任をされる側の対応】
  • 辞任に応じるか、争うか、自身のメリット・デメリットを踏まえて、慎重な検討が必要となる
  • 争う場合には、50%以上の議決権のコントロールが困難であれば、会社に対する損害賠償請求訴訟を提起し、その中で、自身の正当性を訴えていくことが本筋となる
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