労務

外国人を雇用する際に押さえておくべき6つの最低限の知識

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 現在、人手不足として言われており、外国人の労働力を頼りにする経営者も多いのではないでしょうか。

 ただし、外国人を雇用する際には、日本人を雇用するのと異なる法的規制や事務手続等があります。安易に外国人を雇用すると、後日トラブルに巻き困られてしまうおそれがあります。

 そこで、外国人を雇用するにあたり、経営者が押さえておくべき最低限の知識を6つにまとめました。

 是非、参考してください。

 1 外国人を雇用する前に押さえておくべき知識

1-1 外国人の在留期間の確認

 外国人を雇用する際には、まずは、在留カードやパスポートにより在留期間を確認します。

 在留期間を経過している場合には、日本に滞在することは許されない不法滞在者を雇用することになりますので、注意が必要です。

 不法滞在者かどうかを確認するためには、在留期間を本人の口頭による申告だけではなく、在留カードやパスポートなどの提示を受けて必ず確認しましょう。在留カードやパスポートの提示を求めて提示されなかった場合には、在留期間の確認ができなかったとして、雇用するのは止めた方が無難です。

 確認もせずに、不法滞在者を就労させた場合、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法73条の2)として、3年以下の懲役もしくは300万円の罰金となる可能性がありますので注意が必要です。

出入国管理及び難民認定法第73条の2

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  1.  事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  2.  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  3.  業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

 

1-2 外国人の在留資格の確認

 在留期間に問題がなくても、在留資格に基づき就労が制限にされて、経営者が業務としてやってもらいたい仕事に就労させることができない場合があります。在留資格による就労制限を下表に一覧にしましたので、参考にしてください。 

就労制限がない在留資格 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
定めれた範囲内での就労可能な在留資格 外交、公用、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習
指定された就労のみ可能な在留資格 特定活動
就労が認められない在留資格 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在(留学、家族滞在については、資格外活動の許可があれば制限時間内での就労可能)

 表からもわかるとおり、留学生を雇用したいと考えても、在留資格が「留学」となっている場合には、資格外活動の許可がないかぎり、就労不可となります。

 したがって、資格外活動の許可を取得しているかどうかを確認する必要があります

 資格外活動の許可を取得していないで、雇用した場合には、前述したとおり、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法73条の2)として、3年以下の懲役もしくは300万円の罰金となる可能性があります。

1-3 外国人の資格外活動の許可に基づく雇用

 表に記載のとおり、留学、家族滞在の場合、資格外活動の許可を得ている外国人は就労をすることができますが、以下の制限がされているので注意が必要です。

  • 風俗営業に関する業務に就くことはできない
  • 1週について28時間以内、留学生が学校の長期休養期間中に就労する場合には、1日8時間以内

 これらの制限を超えて、就労をすると、不法就労助長罪に問われる可能性がありますので、注意が必要です。

1-4 外国人の在留資格の変更に基づく雇用

 資格外活動の許可を受けていれば働いてもらうことはできますが、上記のとおり制限があり、十分な労働力として期待できない場合もあります。

 このような場合には在留資格の変更を検討します。

 たとえば、留学生を雇用する場合には、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労可能な在留資格に変更をすれば就労が可能となります。

 変更する場合には、本人が入国管理局等で在留資格変更許可申請をして許可をもらう必要があります。

2 外国人の雇用後に押さえておくべき知識

2-1 外国人を雇用する際に押さえておくべき知識

 日本で就労する外国人には、労働基準法、最低賃金法などの労働関係の法律の適用を受けます。

 労働基準法3条には、「使用者は、労働者の国籍…を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定められていますので、当然ですが、外国人であることを理由に日本人と異なる労働条件を適用することは認められていません。

 労働基準法第3条 

 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

 また、雇用の際には、後日のトラブルを防止するために、労働条件を書面又は電子メールで明示をしましょう(労働基準法15条)。

 労働条件を明示する際には、後日のトラブルを防止するためにも、日本語だけでなく、外国人の母国語によるものも準備をしましょう。

 厚生労働省のウェブサイトには、外国人労働者向けのモデル労働条件通知書が掲載されていますので参考にしてください。

労働基準法第15条   使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
 

 

2-2 外国人の労働保険・社会保険

 労働保険(労災保険及び雇用保険)や社会保険(医療保険及び年金保険)は、国籍を問わず、全員加入が原則となります。

 労災保険は、事業所単位で加入をするため、個別の手続は不要ですが、雇用保険はハローワーク、社会保険は年金事務所へ資格取得届を提出する必要があります。

2-2-1 労災保険の適用範囲

 労災保険は、在留資格の有無にかかわらず、適用されます。就労可能な在留資格に基づき就労する者、資格外活動の許可を得て就労するアルバイトは当然ですし、不法就労者にも適用されます。

2-2-2 社会保険の適用範囲

 社会保険の適用事業所に雇用されている外国人は、原則として被保険者となります、健康保険は、一定の条件を満たせば、母国在住の家族も被扶養者となります。

 厚生年金保険については、以下の二つの場合には、外国人への適用が除外されます。

  • 海外企業から日本企業に出向し、給与の全額が海外企業から支払われる場合
  • 日本と社会保障協定を締結している国から5年以内の見込みで日本へ派遣される場合

 社会保障協定の詳細は、年金機構のHPをご確認ください。

 

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