会社法では、株主総会は、年に1回、開催しなければならないとされています。それにもかかわらず、中小企業においては、年に1度の定時株主総会も開催していないことが多くあります。
1人の株主が100%の株式を保有しているオーナー会社であれば、問題が顕在化することはありませんが、2人以上の株主がいる会社では、それが親族であったとしても常に紛争の可能性はあります。
例えば、株主総会において、取締役が適法に選任されなかったとして、会社の取締役ではないと主張されたり、報酬が株主総会決議を経ていなかったとして返還を求められたりします。株主間の関係が良好なときは問題ありませんが、ひとたび、株主間において紛争が生じると、株主総会を行っていなかったことを理由として、いろいろな主張をされることが多くあります。
株主同士において信頼関係があり、問題ないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、いつその信頼関係が崩れるかは分からないないものです。我々も、株主間の信頼関係が崩れ、紛争になっている会社を多く見てきました。
紛争が顕在化した時に、過去に株主総会における決議の有無が、紛争の帰趨を決する場面が多くあります。そのような事態に陥らないよう、普段からきちんと株主総会を開催し、有効な決議を行うことが重要です。
本稿では、株主総会をいつ開催すべきであるのか、及び、その招集方法について、解説いたします。
なお、せっかく株主総会を開催して、適法に決議が成立したにもかかわらず、きちんと議事録を作成しておかなければ、やはり後の紛争の可能性が残ります。議事録作成の基礎については、次の記事も併せてご参照ください。
2021.12.21 更新
Contents
1 株主総会の開催時期
1-1 定時株主総会
株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会があります。
定時株主総会とは、毎事業年度の終了後、一定の時期に年に1回必ず開催される株主総会のことをいいます(会社法296条1項)。
通常は、会社決算後3ヶ月以内に開催すべきこととされます。会社法124条2項には「基準日から3箇月以内に行使するものに限る」と定められているところ、一般的には、決算日=事業年度末日であり、かつ、定款において株主総会における権利行使が可能とする者の基準日を「事業年度の末日」と定めていることが多いことから、決算日から3か月以内に開催しなければならないこととなります。
そのため、例えば、事業年度が1月1日~12月31日とされている株式会社では3月31日までに、事業年度が6月1日~5月31日とされている株式会社では8月31日までに、毎年1回は定時株主総会を開催することが必要となります。
第124条(基準日)
1 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
2 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
上場会社の株主総会が6月下旬に集中する理由もここにあります。すなわち、上場会社の多くは3月末を決算日としていることから、その3か月後である6月下旬に多くの会社において株主総会が実施されています。
但し、近年では、複数の上場会社の株主総会が重複する日時に開催されることで株主の出席の機会が事実上奪われているとの批判もあり、開催日時は分散される傾向にあります。
1-2 臨時株主総会
定時株主総会と異なり、臨時株主総会は、定時株主総会以外であっても必要がある場合には、いつでも臨時に開催することができます(会社法296条2項)。
事業年度の途中であっても、役員の欠員により代わりとなる役員を選任する必要が生じた場合や、緊急に定款変更を行う必要が生じた場合(商号変更、役員を増員するために上限を変更する、資本金を増額するなど)には、臨時株主総会を開催して決議を成立させることが可能です。
第296条(株主総会の招集)
1 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 (省略)
2 株主総会の招集方法の原則・例外、招集通知の記載
2-1 原則
2-1-1 招集通知の発送時期
原則として、株主総会の招集は取締役会の決定(取締役会を設置していない株式会社においては取締役の決定)に基づいて、代表取締役が株主宛に招集通知を発送する方法により行われます。
招集通知の発送時期は、公開会社(譲渡制限株式を発行していない株式会社)においては総会開催日より2週間前まで、公開会社でない会社においては総会開催日より1週間前までとなります(会社法299条1項。但し、書面投票・電子投票を採用する会社は2週間前まで)。これは、招集通知を受け取った株主が議題について検討する期間を設ける趣旨で定められた期間であり、これよりも短い期間しかなかった場合には、当該株主総会においてなされた決議は取消の対象となり得るため注意が必要です。
なお、取締役会設置会社ではない場合には、株主総会の発送時期を定款で短縮することができます。定款の規定方法については、以下の記事を参考にしてください。
なお、招集通知の期間計算においては、「発信日」と「会日」は算入されません。例えば、9月26日に株主総会を開催する場合、1週間前であれば9月18日までに、2週間前であれば9月11日までに、招集通知を発送することが必要となります。1週間前であれば「中7日」をとる必要があるという意味です。
会社法第296条(株主総会の招集)
1、2 (省略)
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
会社法第299条(株主総会の招集の通知)
1 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 株式会社が取締役会設置会社である場合
3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
2-1-2 招集通知の発送方法
招集通知の方法としては、公開会社ではなく、取締役会も設置していない会社であり、書面投票・電子投票を採用しない場合には、特に書面による必要はありませんが、それ以外の場合には書面(株主の承諾があればメールも可)により招集通知を発送する必要があります(会社法299条2項)。
2-1-3 招集通知の記載事項
株主総会招集通知には、開催日時、場所、議題、提出議案(+書面投票ができる旨を定めるときは所定の事項)を記載し、必要書類を添付します。
臨時株主総会の招集通知の記載例も掲載しておりますので、併せてご参照ください。
必要となる記載事項は、次のとおりです(会社法298条1項)。
① 株主総会の日時・場所
② 議題・議案
③ 書面による議決権行使を採用するときは、その旨
④ 電磁的方法による議決権行使を採用するときは、その旨
⑤ その他、法務省令(施行規則63条)で定める事項
このうち、中心となるのは②議題・議案です。
議題は、株主が招集通知を見て総会の決議事項が分かる程度に記載すれば足ります(例:「退任取締役に対する慰労金支給の件」など)。
もっとも、一部の重要な事項については、議題の記載だけではなく議案の要領を記載する必要のある議題もあります(施行規則63条7号)。例えば、役員等の選任や報酬、株式の併合、定款変更、合併や会社分割など組織に関する事項などがこれにあたります。これらに該当する場合には、議題のほか、議案の要領として、具体的な内容を記載する必要があります。
議案要領の記載例(公開会社でない株式会社の場合)
1 取締役選任の場合
当社の取締役全員(3名)は、本総会終結の時をもって任期満了となります。つきましては、取締役3名の選任をお願いするものであります。取締役候補者は、次のとおりです。
番号 氏名(生年月日)
略歴 1 甲山太郎
(昭和11年11月11日生)
平成11年1月 株式会社A 入社
平成22年2月 当社設立・代表取締役
2 乙山次郎
(昭和22年2月2日生)
平成2年4月 株式会社B 入社
平成22年2月 当社取締役
3 丙山三郎
(昭和33年3月3日生)
平成3年4月 株式会社C 入社
平成30年3月 当社取締役
2 役員報酬額改定の場合
当社の取締役及び監査役の報酬額は、第●期定時株主総会において、取締役については年額●万円以内、監査役については年額●万円以内とご承認いただき今日に至っておりますが、前回改定以降の掲載情勢の変化等諸般の事情を勘案し、取締役については年額●万円、監査役については年額●万円以内と改定させていただきたく存じます。なお、取締役の報酬額には、従前どおり使用人兼務取締役の使用人分の給与は含まないものといたします。
会社法第298条(株主総会の招集の決定)
1 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1) 株主総会の日時及び場所
(2) 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
(3) 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
(4) 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
(5) 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
3 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
会社法施行規則第63条7号
第3号に規定する場合以外の場合において、次に掲げる事項が株主総会の目的である事項であるときは、当該事項に係る議案の概要(議案が確定していない場合にあっては、その旨)
イ 役員等の選任
ロ 役員等の報酬等
ハ 全部取得条項付種類株式の取得
ニ 株式の併合
ホ 法第百九十九条第三項又は第二百条第二項に規定する場合における募集株式を引き受ける者の募集
ヘ 法第二百三十八条第三項各号又は第二百三十九条第二項各号に掲げる場合における募集新株予約権を引き受ける者の募集
ト 事業譲渡等
チ 定款の変更
リ 合併
ヌ 吸収分割
ル 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
ヲ 新設分割
ワ 株式交換
カ 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
ヨ 株式移転
2-1-4 招集通知の添付書類
取締役会においては、定時株主総会の招集に際して、計算書類及び事業報告(監査報告・会計監査報告を含む)を招集通知に添付する必要があります(会社法437条)。
また、株主総会において書面による議決権行使を認める場合には、招集通知に株主総会参考書類及び議決権行使書面を添付(株主の承諾により電磁的方法による招集通知を行う場合には、電磁的方法により書面を提供することも可)する必要があります(会社法301条1項2項)。
会社法第437条(計算書類等の株主への提供)
取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
会社法第301条(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)
1 取締役は、第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2 取締役は、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、株主の請求があったときは、これらの書類を当該株主に交付しなければならない。
その他、上場企業においては、上記のほか、連結計算書類その他の株主総会参考書類も添付することとなります。
これらの開示書類は大部となることが多いことから、費用削減や事務手続の簡略化のため、一部の書類についてはWeb開示も認められています。
参照:法務省HP「事業報告等のウェブ開示について」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/kaikaku01/siryou3.pdf
2-2 例外
株主総会の招集方法には、次の例外があります。
2-2-1 例外1 株主による招集
これは、株主が株主総会の招集を求めたにもかかわらず、取締役が株主総会を招集しない場合に、株主自身による招集を可能とするものです。
すなわち、総株主の議決権の3%以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示したうえで、株主総会の招集を請求することができることとされています(会社法297条1項)。
(但し、「3%」や「6か月前から」との要件について、定款でこれらを下回ることとする定めがある場合には、これに従います。また、公開会社でない株式会社においては、「6か月前から」との要件は不要とされています(会社法297条2項)。)
そして、この請求にもかかわらず取締役がなおも株主総会を招集しない場合には、請求した株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することが可能となります(会社法297条4項)。
会社法第287条(株主による招集の請求)
1 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
2-2-2 例外2 株主全員の同意がある場合の招集手続の省略
株主の全員が同意する場合には、招集手続きを経ることなく株主総会を開催できます(会社法300条)(但し、欠席株主について書面等による議決権行使を認める場合には、この限りではありません。)
先述のとおり、事前に招集通知を発送する趣旨は議題について株主が検討する期間を設けることにあることから、全株主がその期間が不要であるとして同意するならば、招集手続は省略してかまわないこととされたものです。
会社法第300条(招集手続の省略)
前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
なお、招集手続の省略とは別に、株主総会そのものを省略する方法として、書面による株主総会決議の成立があります(会社法319条)。
会社法第319条1項(株主総会の決議の省略)
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
書面決議の詳細については、次の記事も併せてご参照ください。
3 議事進行の例
定時株主総会の一般的な議事進行の流れは、次のとおりです。
①議長就任(一般的には社長が議長を務めますが、総務部長などを議長ポストとする会社もあります。)。
②議長が開会を宣言します。
③議長から、議事進行にかかるルール(議事進行には議長の指示に従うことなど)を説明します。
④当該総会の議決権株式数及びその株主数を報告します。
⑤議長が、定足数を満たしていることを宣言します。
⑥監査役が、事業年度に係る監査結果の報告を行います。
⑦議長から、営業報告書、貸借対照表、損益計算書など営業状況に関する説明を行います。
⑧議長が、議案を上程するとともに、その内容を説明します。併せて、議案を一括審議とする場合には、株主からの質問や意見等を受け付けた後に決議事項の採決を行うことにつき、株主の了承を得ます。
⑨株主からの質疑応答を受け付けます。
⑩各議案について、採決を行います。議案ごとに、賛成多数により承認可決された場合には、その旨を宣言します。
→全ての審議が終了したら、議長が閉会を宣言して、株主総会は終了となります。
4 定時株主総会を開催しない場合のリスク
株主総会を開催しなければならないことは分かっているものの、これまで一度も開催したことがない、或いは、代表者の交代により従前の開催方法が分からなくなったなど、様々な理由によって、定時株主総会すら開催していない会社も見受けられます。
しかし、定時株主総会が開催されていない場合、次のようなリスクがあります。
① 取締役選任の根拠が失われるリスク
取締役は、株主総会の決議により選任されます(会社法329条1項)。
そのため、定時株主総会を開催していない場合には、適法な選任がなされていない取締役によって業務執行がなされているとして、当該取締役が行った会社の業務執行行為の有効性が覆されてしまう可能性があります。
会社法第329条(選任)
1 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
2~3 (省略)
② 役員報酬の根拠が失われるリスク
取締役が会社から受け取る報酬額は、定款に定めがある場合を除き、株主総会決議により決定する必要があります(会社法361条1項)。賞与も同様です。
そのため、定款に報酬の定めがなく、定時株主総会も開催していない場合には、これまで支給してきた役員報酬が遡って法律上の原因がないものであるとして、返還請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
会社法第361条(取締役の報酬等)
1 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
(1) 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
(2) 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
(3) 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
2~6 (省略)
実際に、このようなケースにおいて、支払われた賞与について、その相当額の損害賠償請求が認められたケースもあります(東京地判平成12年6月22日金融商事判例1126号55頁。但し、賞与の一部については消滅時効が完成しており、かつ、株主にも知りながら放置してきた過失があるとして相殺が認められています。)。
東京地判平成12年6月22日金融商事判例1126号55頁(抜粋)
「結局、被告の行為は形式的に商法に違反しているはかりか、役員賞与の支給につき株主総会において承認を要するのは、役員によるお手盛りの弊害を防止し、株主のコントロール下に置くことにその目的が存するところ、実質的に見ても、代表取締役である被告と原告ないしはその株主であるAとの間に利害が対立し、かつ、被告は、他の取締役らあるいは原告の収益に比してかなりな高額の収入を得ていることに照らせば、被告の様々な主張にもかかわらず、被告による役員賞与の取得は商法に違反する違法なものといわざるを得ない。」
③ 過料を科されるリスク
定時株主総会を開催しない場合には、取締役に対して、100万円以下の過料が科される場合があります。
また、株主総会自体の開催を怠ったことのみならず、登記の懈怠によっても100万円以下の過料が科される場合があります。
例えば、取締役の任期満了に伴う再任など、会社の登記事項に変更が生じた場合には、2週間以内にその旨を決議した株主総会の議事録を添付して登記申請を行うことになりますが、株主総会を開催していなければ、当然、株主総会議事録も存在せず、登記を懈怠した状態が続きますので、そのこと自体について過料を科されるケースが散見されます(なお、2週間が経過した後にも、登記自体は可能です。)。
このようなリスクを回避するためにも、定時株主総会はきちんと開催すべきであるといえます。
当事務所では、中小企業の株主総会開催の指導やアドバイスも承っておりますので、「どのように開催すればよいのか分からない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。