会社を経営しているあなたを誹謗中傷する内容が掲示板に書かれています。社員でなければわからない情報なども記載されているこのまま放置していると会社の信用問題になりかねません。
経営者であるあなたとしては、掲示板の記載を削除するとともに、書き込みをした者を特定して処分をしたいと考えるでしょう。
ここでは、会社の信用を毀損する掲示板、ブログなどの書込みについては、できる限り、削除をすることが大切です。
削除するために押さえておくべき5つのポイントを記載したので、参考にしてください。
1 裁判外でブログ、掲示板のコンテンツプロバイダー(管理者)に削除請求をすることができるが、応じてもらえない場合もある
2 裁判外での削除請求に応じてもらえない場合には、コンテンツプロバイダーに対し、IPアドレスやタイムスタンプ等の発信者情報の開示請求の仮処分を行う必要がある
3 コンテンツプロバイダーからの発信者情報の開示を受けて、接続プロバイダーに対し、氏名・住所の開示請求の裁判を行う必要がある
4 仮処分をするためには、担保金を積む必要がある
5 裁判手続をする場合、加害者の住所・氏名が開示されるまで、早くて半年がかかる
Contents
1 書き込みの流れを理解しよう
図のとおり、掲示板やブログに対する書込みは、接続プロバイダーを通じて、コンテンツプロバイダーが管理している掲示板、ウェブサイト、サーバに書込みがされます。
加害者(書き込みをした人)と接続プロバイダーは、契約をしていますので、加害者の氏名、住所等の情報を持っているのは、接続プロバイダーです。
しかし、加害者がどこの接続プロバイダーを通じて、掲示板、ブログに書き込みがなされたのかは、コンテンツプロバイダーに照会しないと分かりません。
そこで、加害者を特定するためには、コンテンツプロバイダーに照会を行って、接続プロバイダーを特定し、接続プロバイダーから、加害者の住所、氏名の開示を受ける必要があります。
2 裁判外の削除請求
ブログなどに対する書き込みを削除するにあたり、まずは、書込みがされたサイトの管理会社等(コンテンツプロバイダー)に対し、削除請求をします。たとえば、有名な掲示板やブログであれば、管理会社をすぐに特定できますので、管理会社に対し、削除請求を行います(管理会社によっては削除請求用の受付窓口を設けているところも多いです)。
管理会社は、自社が定めた基準に照らして、削除をするかどうかを判断します。
これに対し、有名な掲示板等ではなく、管理会社が誰なのか分からないことがあります。
この場合に活躍するのがaguse(https://www.aguse.jp/)というサイトです。
このサイトで、書込みがされているURLを入力すると、管理者の住所、名前がでてきます。
その情報をもとに、管理者に削除請求をすることになります。
削除請求に基づき、ブログ等の書込みが削除された場合には、裁判手続は不要となります。
ただし、加害者に対し損害賠償請求を行うためには、加害者を特定する必要がありますので、以下の裁判手続をする必要があります。
3 裁判手続を利用した削除請求
裁判外での削除請求に応じてもらえなかった場合には、裁判手続を利用した削除請求をするしかありません。
しかし、削除請求をする場合に、いくつかの手続をする必要があります。
3-1 コンテンツプロバイダーに対する請求-削除請求、発信者情報開示の仮処分
掲示板やブログに対する書込みというのは、接続プロバイダーを通じて、コンテンツプロバイダーが管理している掲示板、WEBサイト、サーバに書込みがされます。
そこで、第1段階として、コンテンツプロバイダーに対し、加害者がどこの接続プロバイダーを通じて書込みをしたかを特定するため発信者情報開示請求の仮処分を行います。
発信者情報としては、IPアドレスやタイムスタンプ等の開示を求めていくことになります。
また、削除請求が認められる可能性がある場合には、削除請求の仮処分を行います。
これらの手続は、仮処分という迅速な裁判手続で行うことができます。
3-2 接続プロバイダーに対する請求-発信者情報消去禁止の仮処分、氏名・住所の開示請求の裁判
第1段階の仮処分を行い、コンテンツプロバイダーより発信者情報の開示を受けた場合には、接続プロバイダーに対し、氏名/住所の開示請求の裁判を行って、氏名・住所を開示してもらいます。
しかし、書込みをした者の氏名・住所の開示請求は、仮処分で行うことは認められておらず、通常の裁判手続をしなければなりません。そのため、裁判をしている間に、接続プロバイダーがログを削除してします可能性があります。裁判をしている間に、接続プロバイダーがログを消去してしまったら、氏名、住所の開示を受けられません。
ログの保存は、通常3か月の会社が多く、最長で6か月くらいと言われています。
そこで、第2段階として、コンテンツプロバイダーから発信者情報であるIPアドレスとタイムスタンプの開示を受けたら、ログを消去されないように、発信情報消去禁止の仮処分を行います。
そのうえで、第3段階として、接続プロバイダーに対して、加害者の住所及び氏名の開示請求の裁判をすることになります。
4 裁判手続費用
裁判をする場合には、以下の費用が必要になります。
4-1 仮処分の担保金
仮処分はあくまで、裁判所が仮に決定をするものです。
そこで、裁判所は、相手方の損害を担保するために、一定の担保金を積むことを条件に、仮処分の決定を行います。担保金は、裁判に勝訴をしたり、相手方の同意があれば戻ってきますが、その期間は取り戻すことはできません。
求められる担保金の額の目安は以下のとおりです。
1 発信情報開示請求、発信情報消去禁止 10万円~30万円
2 削除請求 30万円~50万円
4-2 弁護士費用
裁判手続を行う場合には弁護士費用がかかることになります。
弁護士費用については、弁護士に相談をしてみましょう。
5 削除までに要する期間
裁判手続外で、コンテンツプロバイダーが削除請求に応じれば、それほど時間が掛かりません。
削除請求をしてから、コンテンツプロバイダーが判断をするまで1週間ほどとなります。
また、仮処分で削除請求が認められる場合には、1か月ほどで削除可能です。
しかし、第3段階までの裁判手続を行って、書込みをした者の氏名・住所の特定を行うためには、早くて半年はかかることになります。
書込みをした者が社員であったら、就業規則に基づき、懲戒処分を行うことになります。
なお、社員の書込みを事前に防ぐ方法については、【社員のSNSへの書込みによるトラブルを防ぐための3つの対策】に記載をしているのご参照ください。