債権回収

【売掛金の時効を徹底解説】売掛金の時効を絶対に成立させない方法

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 売掛金が回収できずに困っている場合は、「売掛金の時効」に注意が必要です。なぜなら時効が成立してしまえば、それを覆すことが絶対にできなくなってしまうからです。せっかく商品やサービスを提供したのに、代金を回収する権利そのものが消滅してしまうのです。とても納得ができないと思いませんか?売掛金の時効は絶対に成立させてはいけません。

 売掛金の時効を絶対に成立させないためには、次の3つのポイントがとても大切です。

  • 時効の期間を正確に把握すること
  • 時効を中断させること
  • 時効の成立前に回収に対する手順を追ったアクションを確実に実行すること

  時効の期間を正確に把握して適切なアクション を行う必要があるのです。

 私たち弁護士は、クライアントの売掛金問題に対して以下のような対処を用意してご説明しています。

  • 売掛金の時効をはっきりと把握できるように全ての根拠条文と具体例
  • 売掛金の時効に関して、知っておくべき6つのポイント
  • 今すぐできる催告の方法や催告のテンプレート

 あなたの会社で特に長期滞留になっている売掛金や金額大きな売掛金に対する対処の際の参考にしてください。

1 売掛金の時効の年数は商品やサービスによって違う

 さて、あなたの商品やサービスの売掛金の時効は、何年が正しいのでしょうか?商法には、売掛金は、会社間の取引により生じた債権であり時効は5年と書いてあります。その一方で民法では2年で時効になると規定されていたりします。一体、どの根拠をもとに判断をしていけばいいのでしょうか?

 弁護士の説明は基本的に分かりにくいことが多いと思いますが、出来る限り分かりやすく時効の根拠条文と具体例を記述しました。これを見れば、あなたの売掛金の時効が明確になると思います。(なお、ここでの売掛金とは、会社の行ったサービスの料金、会社が販売した商品代金などを指すものとします。)

【売掛金の時効期間と根拠条文】

債権の種類

時効期間

根拠条文

下記以外の取引

5年

商法522条

医者の診療報酬

工事の設計、施工等の工事代金債権

3年

民法170条

弁護士報酬

商品の売買代金債権

2年

民法172条

民法173条

運送代、宿泊費、飲食店

1年

民法174条

 あなたの会社が行った仕事の内容によって、売掛金の時効は変わってきます

 例えば、あなたがコンサルティングのサービスの対価であるコンサルティング料金の回収を考えている場合には、時効は5年となります(商法522条)。

商法522条  商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

 

 また、あなたが建設会社を経営しており、建築をした請負代金の回収を考えている場合には、その時効期間は3年となります(民法170条)。あなたの会社が販売した商品の売買代金の回収の場合には、時効は2年となります(民法173条)。ホテルの宿泊料金、飲食店のツケは1年で時効となります(民法174条)。

 

民法170条  次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
1   医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
  工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
 
 
民法173条  次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。

  生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
  自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために 仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
3   学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
 
民法174条  次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。

1   月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
2   自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
3   運送賃に係る債権
4   旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
5   動産の損料に係る債権

 特に、商品の売買代金の場合、売掛金の時効は2年と大変短いので、注意が必要です。時効期間がはっきりと分かれば、次はどのように対処するかです。時効について知っておくべき知識と対処法について、次からみていきましょう。

2 時効は債務者が時効成立を主張して初めて成立する

 時効は、債務者が「時効である」と主張する(「時効を援用する」といいます。)ことで初めて成立します。そのため万が一、時効の期間が過ぎていても、売掛金を払ってもらうことは特に問題有りません。

 また、時効の期間が過ぎていたとしても、債務について承認をしてもらえば、その後、債務者が時効であると主張することは許されないとするのが判例です。

【最高裁判所判昭和41年4月20日判決】

債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし相当であるからである。

 したがって、時効期間が過ぎていたとしても、売掛金を請求し、取引先(債務者)から債務の承認を取りましょう。

 

 債務の承認を採る方法については、後ほど解説をします。

3 時効はいつから数えればよいのでしょうか?-時効の期間は支払期限の翌日から進行する

 時効の期間は支払期限を過ぎたときから進行します。たとえば、あなたの会社が、平成28年4月20日に、コンサルティングサービスをして、その売掛金の支払期限が平成28年6月30日だったとします。この場合、時効が始まるのは平成28年7月1日からとなります。コンサルティングサービスの売掛金の時効は5年なので、平成33年6月30日に時効になります。

 以下、実際の時効がいつになるのかを表にしてみました。平成28年4月20日にサービスを提供したり納品をしたりした場合、その支払期限が平成28年6月30日だった場合、それぞれの時効の日付を見てください。

仕事の内容

時効期間

時効開始

時効完成

コンサルティングサービス

5年

平成28年7月1日

平成33年6月30日

請負工事

3年

平成28年7月1日

平成31年6月30日

商品の売買

2年

平成28年7月1日

平成30年6月30日

 表からもわかるとおり、あなたの会社が回収したいと思っている売掛金が、どのような仕事によって生じたものであるかで、時効期間は変わってきます。また、いつに支払ってもらうことになっていたかによっても、時効が完成する日が変わってきます。

 自分が回収したい売掛金が、どのような業務から発生した債権なのか、支払期限はいつになっていたのかを確認して、売掛金がいつ時効になるのかを確認しましょう。

4 とにかくまずは時効を中断させよう

 時効を中断させれば時効はリセットされ、時効の中断事由がなくなったときから、再度、時効が開始することになります。つまり、時効を中断させれば、時効期間は伸びることになります。たとえば、商品の売買代金の時効は2年です。2年というのはあっという間で、何もしていないと、売掛金の回収を泣き寝入りするしかなくなります。しかし、時効を中断させれば、2年経っても時効にはなりません。

 時効を中断させれば、一度、リセットされ、再度、2年の時効となりますので、時効が伸びることになります。売掛金を諦めずに回収するためには、時効を中断させることが必要です。では、具体的にどのような手続きを行えばよいのでしょうか。

5 時効中断の方法をしっかりと押さえよう

 それでは、時効の中断の方法としては、どのようなものがあるでしょうか。民法では、次の3つの方法が用意されています(民法147条)。

  • 裁判上の請求
  • 差押え、仮差押え又は仮処分
  • 債務の承認

 

民法147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。

1請求

2差押え、仮差押え又は仮処分

3承認

 

 ①裁判上の請求とは、文字通り、裁判所に訴訟提起をすることなどがあたります。裁判所手続をする必要がありますので、手間もかかりますし、裁判所に納付しなければならない印紙代や、弁護士に依頼をすれば、弁護士費用もかかることになります。

②差押え、仮差押又は仮処分についても、裁判所の手続きです。差押え、仮差押えなどの意味についてはここでは詳しく触れませんが、裁判所に対する手続となりますので、手間もかかりますし、裁判所に納付する印紙代や弁護士費用もかかることになります。

③債務の承認とは、文字通り、債務を認めることです。

  • 取引先に、売買代金を請求したら、取引先から、「なんとかお金を準備するので、もうすこし待って欲しい」と言われた場合はどうでしょうか。この場合、取引先は、債務があることを前提に、支払いを待って欲しいと言っているのですから、債務の承認となります。
  • 取引先から、100万円の売買代金のうち、分割で10万円を支払ってもらっていた場合はどうでしょうか。この場合も、取引先は、100万円の債務があることを前提に、分割払をしているのですから、債務の承認となります。

債務の承認があった場合、時効は中断、すなわち、リセットされ、債務の承認のときから、改めて、2年の時効(売買代金の場合)が始まることになります。

6 時効を中断させるために、債務者(取引先)の承認を取ろう

 ①裁判上の請求、②差押え、仮差押え又は仮処分によっても時効は中断しますが、裁判所に対する手続きですので、手間もかかりますし、弁護士に依頼する場合には、費用がかかります。これらに比べて、債務者の承認を取るにあたっては、債務者に債務の存在を認めてもらえばよいだけですので、裁判所の手続は不要です。時効を中断させるためには、債務者の承認を取ることが一番手間もかからず、手っ取り早いことがお分かりいただけると思います。

それでは、債務の承認をどのように取ればよいかでしょうか。取引先が債務を承認したと裁判で言っても、証拠がなければ裁判では負けてしまいます。そのため、取引先が債務を承認したことがわかる証拠を作ることが重要です。

債務の承認の証拠としては、次の3つが証拠としての機能を果たします。

  • 書面
  • メールのやりとり
  • 録音データ

 そして、具体的な内容については取引先から以下の内容を書面又はメール、もしくは録音データで取得してください。

  • 債務があることを認める
  • 債務を分割で支払ってもらう
  • 債務の支払いを猶予してほしい

 書面については、どんな紙でもよいので、「A社は貴社に対し、100万円の債務があります。平成●年●月までに支払います」と記載をしてもらい、代表者から署名、押印をもらえば問題ありません。

 また、メールでのやりとりにおいても、債務を認める旨のメールを引き出せれば問題ありません。

ただし、あなたは、売掛金の回収に困っているでしょうから、取引先にお願いしても記載しえもらえないかもしれません。このような場合には、取引先とのやりとりを録音することで構いません。取引先に電話をして、債務を認めるような発言を録音しておきましょう。たとえば、以下のようなやりとりを録音に残しておきます。

あなた:「1年前に販売させていただいた弊社の商品の代金の入金が確認できていないのですが、弊社からのご請求書は確認していただけておりますでしょうか?」

取引先:「申し訳ありません。来月には支払えると思いますので、もう少し待っていただけないでしょうか」

 取引先の発言は、債務があることを前提の発言ですので、債務の承認にあたります。このように、債務を認める発言を取引先から引き出し、録音しておくことが重要です。

 なお、相手に内緒で録音をして問題ないのかということを心配される方もいるかもしれませんが、民事裁判では、問題なく証拠として使うことができますので、録音を積極的に利用しましょう。録音の機器は、レコーダー、スマートフォンの録音機能を使ったものでも、何でも構いません。

7 債務承認がない場合には、裁判上の手続をするしかない

 債務の承認を取ることがどうしてもできなかった場合には、時効中断の手段は、裁判所に対する手続きしかありません。費用をかけて裁判をする場合、裁判で勝ったとしても取引先に支払い能力がない場合、結局支払ってもらえないという可能性を検討しなければなりません。回収可能かどうかについては、弁護士と相談をしてみるのも一つの手でしょう。

8 時効間近の場合は、催告をすれば6か月の猶予期間ができる

 債務者の承認を取ることができない場合、時効を中断するためには、上記のとおり、①裁判上の請求、②差押え、仮差押え又は仮処分という裁判上の手続が必要となります。しかし、たとえば、時効が3日後に迫っていた場合には、裁判上の手続が間に合わないかも知れません。このような場合の救済制度として、催告という制度があります。

 催告というのは、簡単にいえば、売掛金を支払ってくれと請求をすることです。取引先に対して売掛金を請求すれば、請求した日より6か月間の猶予期間が生じます。たとえば、時効の完成が平成30年6月30日であった場合、平成30年6月25日に、催告をすれば、平成30年12月24日まで、時効が成立しません。その間に、裁判上の請求をして、時効を中断させることができます。

 時効が間近に迫っていた場合でも催告を行えば、6か月の猶予期間ができますので、諦めずに対応しましょう。

催告の方法としては、必ず内容証明郵便で行うようにしましょう。裁判において、取引先に請求をした、請求をしたことが取引先に届いたということを証明できるようにしておくことが重要です。催告の書面のテンプレートを準備しましたので、こちらを利用して下さい。

催告書テンプレート

 ただし、内容証明郵便による発送をしていたら、時効期間を過ぎてしまい、間に合わない場合には、FAXで送付をして送信履歴を取っておくなども考えられます。

 書面による催告が難しい場合には、電話で催告をして、録音データを証拠として提出するという方法も考えられます。

9 まとめ

 売掛金の時効を絶対に完成させないためには、まず時効を中断させることが必要です。

 時効を中断させるためのポイントは以下のとおりです。

  • 取引先から債務を承認してもらう
  • だめな場合には、裁判手続をする必要がある

 以上を念頭に、売掛金が時効にならないようして、諦めず、粘り強く回収をしましょう。

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