労務

退職勧奨6つのポイント:社員に自ら退職届を出してもらう際に押さえるべきこと

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 あなたがベンチャ一企業の経営者なら、長く経営すればするほど、必ず社員の中に問題社員が出てくるものです。あなたは、今その問題社員にどのように辞めてもらうか悩んでいませんか?

 会社から社員に退職を促すことを、「退職勧奨」 と呼びます。

 本来なら間題のある社員は解雇すればいいのですが、 解雇が許されるケースには厳しいルールやそれに伴うリスクがあります。そのため問題のある社員には、退職を促して自ら退職届を出してもらう形の方がスムーズにいくケースもあり効果的です。

 しかし、「退職勧奨」も強要するような形になってしまうといけません。 裁判で争われた場合に、従業員の退職が無効となったり、会社が損害賠償の責任を負ったりすることになってしまうのです。

 そこで、あなたが社員に退職勧奨をする時に、押さえておくべき6つのポイントについて解説します。

 ぜひ参考にしてください。

  • 適法な退職勧奨と、違法な退職強要の分かれ目は、「社会通念上相当と認められる」かどうかである。

 東京地方裁判所は次のように示しています。

【東京地方裁判所平成23年12月28日判決】

退職勧奨は、勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であるが、これに応じるか否かは対象とされた労働者の自由な意思に委ねられるべきものである。したがって、使用者は、退職勧奨に際して、当該労働者に対してする説得活動について、そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り、使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るものと解するのが相当であり、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって、その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず、そのようなことがされた退職勧奨行為は、もはや、その限度を超えた違法なものとして不法行為を構成することとなる。

 つまり、従業員に対して以下のことをしてはいけないということです。

  • 不当な心理的圧力を加える
  • 名誉感情を不当に害したりする

 このようなことは行ってはならず、あくまで従業員が自由な意思で自発的に退職に応じるように説得を行うことが必要となります。でも、不当な心理的圧力とはどのようなことなのでしようか。また、名誉感情を不当に害するとはどのようなことなのでしょうか?

 もう少しイメージが沸く ように、 判例を交えて具体例を見ていきましよう。

1、退職を勧める時は「退職はあくまであなた自身が決めること」 という姿勢で臨むことが大切である

 「退職はあくまでもあなた自身が決めること」という姿勢で臨みましょう。

 退職勧奨に応じるか否かは、あくまで対象とされた従業員の自由な意思に委ねられるもので、そうであるからこそ有効なものだからです。

 自由な意思を失わせるような言動はしてはなりません。暴力的な行為や侮辱的な言動はもちろん、そこまでいかなくても、退職の勧めに応じない場合に不利益が生じることを強調するといったことのないように注意する必要があります。

 裁判例では、次のような言動が問題となり、応じた退職は自由な意思に基づくものではないと判断されています。

  • つねる、唾を吐きかける、シンナーを嗅がせる、「欠格者」と記載された顔写真付きのポスターを掲示する(東京高等裁判所平成22年1月21日判決)
  • 「自分で行き先を探してこい」、「ラーメン屋でもしたらどうや」と言う(神戸地方裁判所姫路支部平成24年10月29日判決)
  • 「寄生虫」と言う、机を叩く(大阪高等裁判所平成13年3月14日判決)
  • 「進退一任しなければ処分する、研究できなくなる」と伝える(神戸地方裁判所平成25年6月28日判決)
  • 懲戒免職の可能性を示唆する(東京高等裁判所平成24年11月29日判決)

 このように、強要や無理矢理ということではなく、自分の意思でという形を作りましょう。

2、退職を勧める面談の回数と時間は上限を決めておく

 あまりに多数の面談や、長時間の面談を行って退職を勧めるといったことのないように注意する必要があります。

 面談の回数が多かったり、面談の時間が長かったりすると、自由な意思を失わせるような強制や執拗な要求があったと判断されやすくなります。面談の回数や時間は、あらかじめ決めておかないと、勢い、多く・長くなりがちです。

 裁判例では、次のような事例で、問題があったと判断されています。

  • 約2か月で11回、最長2時間15分、最短でも20分(広島高等裁判所昭和52年1月24日判決)
  • 約4か月で30数回(大阪高等裁判所平成13年3月14日判決)

 このように、あらかじめ回数や時間を決めておくと良いでしょう。

3、明確に拒否されたらそれ以上勧めない

 従業員が退職しないという意識を明確に示したような場合には、それ以上退職の勧めを行うことのないように注意する必要があります。

 明確に拒否しているにもかかわらず、退職の勧めを継続すると、自由な意思を失わせるような強制や執拗な要求と判断される可能性が高いです。

 従業員が退職の条件を正確に理解していないと思われるような場合や、慎重に意思を確認する必要がある場合には別ですが、基本的には、従業員が明確に退職を拒否したら、面談は中止すべきでしょう。

4、その社員の問題点を明確にしておく

 退職を勧める対象となる従業員について、退職を勧められてもやむを得ないような問題点があったか否かという点も、裁判所の判断に影響します。

 例えば、就業規則に違反するような行動があったという場合や、能力が求められている水準に達していないという場合です。

 これは、内容を明確にしておくことはもちろんですが、それを後から確認できるよう形に残しておくことも必要です。

 就業規則に違反する行為について、懲戒処分を行っていれば、その資料があるはずですし、結果的に懲戒処分を行わないこととした場合であっても、報告資料等はあるのが通常だと思います。

成績が十分でないというのも、資料により確認できることが多いと思いますが、能力が足りないというのは、意識して証拠として残しておかないと難しいです。具体的にどのような能力が不足しているのか、それはいつ、どのような仕事の、どのような点に表れているのかといった点を、上司や同僚の説明と併せて記録化しておくことが必要になります。

 その他、証拠化・記録化という点では、説明内容や面談状況の録音・録画も、重要になる場合があります。特に、その従業員の性格や、これまでの態度などから見て、後に争いになりそうな場合には、退職勧奨を行う最初の段階から、説明や面談を録音・録画しておくことが望ましいでしょう。録音・録画を行う際には、事前に、その旨を説明しておくべきで、その説明も録音・録画の対象に含めておくのがベターです。

 従業員の方が秘密録音をしている可能性もあります。

5、異動させて追い込んではならない

 配置転換や出向などの人事上の処遇を通じて、労働者を退職に追い込むことは認められません。

 退職を勧める対象となる従業員や、退職の勧めに応じなかった従業員に対して人事異動を行う場合には、それが退職に追い込むための不当な動機・目的に基づくものであるとされることのないように、時期や内容に気を付ける必要があります。

 例えば、従業員が退職に応じない意思を明確に示した直後に、その従業員に不利益となるような人事上の処遇を行うと、不当な動機・目的によるものと判断されやすくなります。

 また、人事上の処遇は、正式は配置転換や出向命令にかぎらず、過度な業務負担を課す、全く業務を与えない、意味のない業務を言い渡すなども含まれます。

6、良い条件を提示する

 退職の勧めに応じて退職する場合に、退職金の割増や、再就職支援を受けられるようにすると、従業員が任意に退職に応じたと判断されやすくなります。

 退職を自己都合退職とするか会社都合退職とするかという点も、従業員から見たときに、失業保険の給付内容に関して違いがあります。

7、まとめ

 会社から従業員に対して自発的な退職を促す際に押さえておくべきポイントをご紹介しました。

 退職を巡るトラブルは、会社にとっても従業員にとっても不幸な出来事になりますから、退職の勧奨を行う場合には、個別の具体的な事情を考慮して、慎重に臨むことが必要といえるでしょう。

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