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これだけは押さえておきたい!景品表示法の基礎

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 景品表示法という法律について、実はよく分かっていないということはありませんか?不当表示、優良誤認、有利誤認という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどういう場合にそれに該当するのかや、他にどのような規制があるのかは分からないということはないでしょうか。

  景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。読んでのとおり、「景品類」に関する規制と、「表示」に関する規制の2本立てとなります。「景品」というと、商店街のふくびきをイメージされるかもしれませんが、その範囲は極めて広いです。「表示」も、その対象は広く、およそあらゆる取引に関係してきます

 また、違反した場合の影響も、消費者庁から措置命令という処分を受けたり、場合によっては課徴金という金銭的な制裁を受けることもあり得ます。処分を受けると、氏名と違反行為の内容が公表されることになり、社会的な評価や信用に関わりますし、被害者との間の民事的な紛争にもつながります。消費者と直接接点がありますので、場合によっては、いわゆる炎上に発展することもあり得、そのダメージは極めて大きなものとなります。

 景品表示法の規制については、しっかりと押さえておく必要があります。今回は、景品表示法の規制について、概要をご説明します。

 

1、景品表示法の規制の概要

 景品表示法の規制は、次の2つが柱となります。

① 不当表示の禁止

② 景品類の制限及び禁止

 「不当表示の禁止」の規制の特徴としては、次の2つを挙げることができます。

  •  ルールは比較的シンプル
  •  具体的な事例への適用は判断が難しい

 「景品類の制限及び禁止」の規制の特徴としては、次の2つを挙げることができます。

  •  細かい基準が定められている
  •  要点を押さえるのが容易ではない

 その他、景品表示法の関係では、「公正競争規約」という、内閣総理大臣(消費者庁長官)や公正取引委員会の認定を受けて事業者や事業者団体が自主的に設定した業界ルールがあります。

 現在、表示関係で67、景品関係で37の公正競争規約がありますが、公正競争規約を遵守していれば、通常、景品表示法違反と判断されることはないとされており、重要な機能を果たしています。

 

2、不当表示の禁止

 不当表示には、次の3つがあります。

① 優良誤認表示

 ※ 不実証広告規制

② 有利誤認表示

③ 指定告示

 表示とは、

1、優良誤認表示

 優良誤認表示とは、次の表示をいいます。

商品役務の内容について、

① 実際のものよりも著しく優良であると示す表示

② 事実に相違して当該事業者と同種・類似の商品役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示

 カシミヤ100%でないのにカシミヤ100%であると表示することや、他の事業者も有している技術なのに自社だけが有しているかのように表示することが、これに当たります。

 優良誤認表示との関係では、不実証広告規制というものがあり、重要です。

 優良誤認表示の疑いがある場合に、内閣総理大臣(消費者庁長官)は、その表示を行った事業者に対し、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされ、次の場合には、その表示は優良誤認表示とみなされることになります。

  • 当該事業者が何ら資料を提出しない場合
  • 表示の裏付けとなる合理的根拠とは認められない資料を提出した場合

 これを不実証広告規制といいます。

2、優良誤認表示

 有利誤認表示とは、次の表示をいいます。

商品役務の価格その他の取引条件について

① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

② 当該事業者と同種・類似の商品役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

 定価での販売を行っていないのに割引価格であると表示することや、一般的には3人前の分量しかないのに5人前と表示することが、これに当たります。

3、指定告示

 その他誤認されるおそれがある表示として、指定告示というものがあります。 

 これは、商品役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するものであり、現在、次の6つが指定されています。

① 商品の原産国に関する不当な表示

② 無果汁の清涼飲料水等についての表示

③ 消費者信用の融資費用に関する不当な表示

④ おとり広告に関する表示

⑤ 不動産のおとり広告に関する表示

⑥ 有料老人ホームに関する不当な表示

 

 3、景品類の制限及び禁止

 景品類の制限及び禁止に関する具体的な規制は、告示や運用基準に定められています。

 概要は、以下の3つです。

① 一般懸賞による景品類の提供制限(最高額・総額)

② 共同懸賞による景品類の提供制限(最高額・総額)

③ 総付景品の提供制限(最高額)

 景品類とは、次のものをいいます。

① 顧客を誘引するための手段として

② 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する

③ 物品、金銭その他の経済上の利益

 ※ 値引き、アフターサービス等は除く

1、一般懸賞

 一般懸賞とは、次のものをいいます。

  • 懸賞

 商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること

  • 共同懸賞以外のもの

 一般懸賞における景品類の限度額は、次のとおりです。

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2、共同懸賞

 共同懸賞とは、次のものをいいます。

  • 複数の事業者が参加して行う懸賞
  • 「共同懸賞」として実施することができる

 共同懸賞における景品類の限度額は、次のとおりです。

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3、総付景品(そうづけけいひん)

  総付景品とは、次のものをいいます。

一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類

 総付景品の限度額は、次のとおりです。

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4、景品表示法に違反した場合の影響

 消費者庁が調査をした結果、不当表示の景品表示法違反があると判断した場合には、措置命令という処分がされることがあります。

 措置命令がされると、氏名と違反行為の内容が公表され、また、是正措置の内容として、違反行為の取り止め、誤認の解消、再発防止、将来の同種行為の禁止、これらの消費者庁長官への報告などが命じられます。この誤認解消措置は、日刊新聞紙2紙への掲載が必要とされます。

 また、課徴金納付命令という金銭的な制裁を受ける場合もあります。

 措置命令にまで至らなくても、行政指導として、違反のおそれのある行為を行った事業者は、是正措置を採るよう求められることがあります。

 その他、適格消費者団体による差止請求、独占禁止法に基づく差止請求、民法上の不法行為による損害賠償請求、不正競争防止法違反の刑罰などが問題となる場合もあります。

 以上のような影響を生ずる違反行為を事前に防止・抑止するための仕組みとして、事業者が講じることを求められる管理措置というものもあります。

 

 以上のとおり、景品表示法の規制について、概要をご説明しました。

 景品表示法の規制内容と違反した場合の影響については、きちんと押さえ、違反を未然に防止することが重要です。

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