リーガルチェックとは、契約書などを法律の専門家に確認してもらうことです。
ビジネスにおいて契約書を交わす場面は多くありますが、よく分からないまま相手方に提示された契約書に合意してしまっている人も多いかもしれません。
しかし、契約条項に瑕疵や曖昧な点があると、それが後々トラブルにつながる可能性があります。
例えば、売買契約において、商品の欠陥があった場合の条項を定めていなかったとしたら、欠陥品を納品されても返品や払い戻しができずに、大きな損をしてしまうということもあり得るのです。
そのため、自社への不利益やトラブルを回避するために、法律の専門家である弁護士に契約書のリーガルチェックをしてもらうことが大切になります。
本記事では、リーガルチェックとは何か
- リーガルチェックの重要性
- リーガルチェックを依頼する5つのメリット
- リーガルチェックを依頼する2つのデメリット
- リーガルチェックの流れ
について紹介していきます。
「リーガルチェックとは?」「リーガルチェックって必要?」「どんなメリットがあるの?」などの疑問に答える形で、リーガルチェックについて網羅的に詳しく解説していきます。
また、契約書を自分でチェックする方法やリーガルチェックを依頼する専門家の選び方についても解説していきます。
本記事を読むことで、リーガルチェックとは何か、メリットやデメリット、流れなど必要なことを理解した上で、取引先と交わす予定の契約書などに関して、リーガルチェックをするべきかどうかを判断できるようになるでしょう。
Contents
1.リーガルチェックとは契約書などを法律の専門家に確認してもらうこと
上述した通り、リーガルチェックとは、契約書などを法律の専門家に確認してもらうことです。「契約書のレビュー」と呼ぶこともあります。
あらゆるビジネスを行うにあたり、売買契約書や賃貸契約書、業務提携契約書など、契約書を交わす機会は多くあります。
しかし、ビジネスに関しては専門的な知識を持っていても、法律については専門的な知識を持っていないという人も多いでしょう。
そのため、複雑で法改正も多い最新の法律について十分な知識を持ち、かつ、判例も頭に入っている専門家に契約書をチェックしてもらう「リーガルチェック」が必要です。
このリーガルチェックを行うことで、契約書の適正を保ち、後々のトラブル拡大を事前に回避することができます。
顧問弁護士がついている会社であれば、顧問弁護士にリーガルチェックをしてもらうことになりますが、重要な契約書のみ単発でリーガルチェックをしてもらうことも可能です。
リーガルチェックは、具体的には契約書において、下記のような点をチェックしていきます。
- 法的に違法性がないか
- 自社に不利益な条項はないか
- トラブルにつながりそうな条項はないか
- 実際の取引内容と齟齬はないか
2.リーガルチェックの重要性
契約書を専門家が確認する「リーガルチェック」は、非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、リーガルチェックがされていないと、下記のような問題が起こる可能性があるからです。
- 契約書に不備があることで、金銭的なトラブルに発展し、損害賠償請求される
- 法改正に適応していない契約書を気がつかず締結してしまい、契約自体が無効になる
- 国を超えて海外の会社と契約する際、国の法律や判例についての知識がないため不利益を被る
例えば、不動産の売買契約において、売主が必要以上の責任を負わされるような契約を結んでしまい、修繕や割引に対応せざるを得なくなり、大きな損を被ることもあります。
また、買主が売主に責任を追求できないような契約になっていれば、不動産に大きな瑕疵があったとしても修繕も割引も請求できずに、買主が大きな損を被るでしょう。
このように、法律の知識がなく、何を確認していいのかも分からないまま契約書を締結してしまうと、あらゆるリスクを負う可能性があります。
そのため、本業のビジネスに影響が出ないようにするため、契約書締結前にリーガルチェックを実施することをおすすめします。
3.リーガルチェックを依頼する5つのメリット
リーガルチェックを依頼する下記メリットについて具体的に解説していきます。
- トラブルを事前に回避できる
- 自社に不利な契約について事前に気が付ける
- 契約書の違法性を事前にチェックできる
- 取引内容に合わせてアドバイスがもらえる
- 弁護士と関係を築いておくことができる
3-1.トラブルを事前に回避できる
リーガルチェックを依頼する1番のメリットは、契約の相手方とのトラブルを事前に回避できるという点です。
ビジネスは常に問題なく進むわけではなく、時には想定外の出来事が起こることもあります。
そのような時に、契約書に対処方法が明確に記載されていれば、契約書に従って迅速に問題解決をすることが可能です。しかし、契約書に対処方法が書かれていなかったり、曖昧な表現で書かれていたりすると、相手方とのトラブルにつながってしまいます。
トラブルが拡大し、損害賠償請求で争うようなことになれば、ビジネスどころではなくなってしまうかもしれません。
リーガルチェックを行っておけば、トラブルを想定した条項をあらかじめ盛り込んでおくことができ、また、「どのように解釈していいか分からない」ような曖昧な表現も修正してもらえます。
このように、リーガルチェックは、契約上のトラブルをあらかじめ回避できるといったメリットがあります。
【契約の相手方とのトラブル事例】
会社のHP作成を業者にお願いしたところ、著作権やコンテンツの権利が相手方にあるという契約を締結してしまった。そのため、HPのコンテンツを修正・追加したくてもできなくなってしまい、相手方とのトラブルにつながってしまった。
3-2.自社に不利な契約について事前に気が付ける
リーガルチェックのメリットとして、自社に不利な契約について事前に気が付けるという点があげられます。
特に、契約書を取引相手から提示された場合には、相手に有利な内容になっていることが多いです。そのため、相手に提示された内容のまま契約を締結してしまうと、後から重大な不利益を被ることもあります。
後から気がついても遅いので、リーガルチェックを行い、事前に契約書が不利な内容になっていないか確認することが大切です。
リーガルチェックを行えば、専門家に自社に不利な条項を特定してもらい、相手方と交渉して修正し、不利益を回避することができます。
【自社に不利な契約事例】
アパレルショップにおいて、商品の仕入れをある会社から行ったが、商品が欠陥だらけだった。そこで、金銭の払い戻し、もしくは、新しい商品への差し替えを依頼したが、契約書に「商品に欠陥があった場合の対応」について明確な記載がなかった。そのため、欠陥のある商品に対してのケアが何もなく、大幅な損を背負うことになってしまった。
3-3.契約書の違法性を事前にチェックできる
リーガルチェックのメリットとして、契約書の違法性を事前にチェックできるという点があげられます。
実は契約の種類によっては、必ず盛り込まなければならない条項が法律で決められていることがあります。そのため、契約者が法律の専門家でない場合には、知らずに違法な契約を結んでしまっていることもあるのです。
契約書に違法性があると、行政の指導の対象になったり、大きな不利益を被ったりすることがあります。
法律は法改正も多く、解釈も難しいために、やはり深い知識のある専門家にリーガルチェックをお願いした方が、安心してビジネスを展開していくことができるでしょう。
【契約書の違法性に気がつかない事例】
エステや学習塾、語学教室においては、特定商取引法の規制がおよび、クーリング・オフの規定を盛り込まなければいけないとされているが、知らずに契約書に盛り込むのを忘れてしまった。この規定が盛り込まれていない場合、サービスを受ける側はいつでもクーリング・オフできてしまうことになるため、事業主は大きな不利益を被ることになった。
3-4.取引内容に合わせてアドバイスがもらえる
リーガルチェックのメリットとして、取引内容に合わせてアドバイスがもらえるという点があげられます。
契約書には雛形があり、インターネットからでも簡単にダウンロードできることがほとんどです。
しかし、雛形通りに記載したからといって、自身の取引内容と完全に一致しているかと言えば、そうでないことも多く、実態に合わない契約書が出来上がってしまうことがあります。
実態に合わない契約書では、問題が起こったときの対応条項が抜けており、トラブルが拡大してしまうでしょう。
リーガルチェックを行えば、取引内容の実態に合わせて契約書を作りあげることができるので、トラブル時の詳細についても事前に合意しておくことができます。
3-5.弁護士と関係を築いておくことができる
リーガルチェックをお願いすることで、弁護士と関係を築いておくことができるというメリットもあります。
多くの人はリーガルチェックを弁護士に依頼するため、相手方と何かトラブルがあったときでも、リーガルチェックを実施してくれた弁護士に頼ることができ、安心してビジネスを行うことができます。
また、契約書に関わることでなくても、法律上のトラブルを抱えた場合に、馴染みの弁護士に相談できるとなれば、安心感が違うでしょう。
4.リーガルチェックを依頼する2つのデメリット
リーガルチェックは契約を結ぶ際に非常に重要であることを解説してきましたが、リーガルチェックを依頼するデメリットも存在します。
- 金銭的負担が増える
- 契約書チェックのために時間をロスする
上記2つのデメリットについて解説していきます。
4-1.金銭的負担が増える
リーガルチェックを行うデメリットとして、金銭的負担が増えるという点があげられます。
金額は、契約内容やチェック範囲によっても異なってきますが、相手から送られた契約書をチェックするだけであれば、1万円から3万円程度かかります。
契約書作成を一から依頼する場合には5万円程度、複雑な契約内容である場合や契約書チェック以上のアドバイスが欲しい場合には、10万円から15万円程度かかることもあります。
顧問契約を結ぶ場合には、月額3万円程度のこともあり、その場合のリーガルチェックは無料であることがほとんどです。
ただ、どの方法を選ぶにしても、リーガルチェックにおける金銭的負担は小さいものではないため、リーガルチェックのデメリットと言えるでしょう。
【金額の目安】
契約書のリーガルチェック |
1万円から3万円程度 |
契約書作成 |
5万円程度 |
契約書のリーガルチェックとアドバイス |
10万円から15万円程度 |
月額顧問契約 |
月額3万円~ |
※契約内容や弁護士、アドバイス内容、リーガルチェックの件数などで金額は大きく変わります。
4-2.契約書チェックのために時間がかかる
リーガルチェックのもうひとつのデメリットとしては、契約書チェックのために時間がかかるという点です。
ビジネスにおいては、スピードが鍵を握ることもあり、契約書のチェックに時間をかけることで大きなチャンスを失ってしまう、ということもあるかもしれません。
しかし、時間がかかるという点については、事前に契約書を自分である程度チェックしておくことや、専門家に急ぎであると伝えることで短縮することも可能です。
一方で、契約書に瑕疵があり、相手方とトラブルになった場合の方が大きく時間をロスすることにつながるので、やはり、リーガルチェックは行っておいた方が賢明でしょう。
契約書のチェック方法においては、6章「6.契約書は事前に自分で確認してからリーガルチェックを依頼しよう」で解説しているので、併せて確認してみてくださいね。
5.リーガルチェックの流れ
実際にリーガルチェックを依頼した場合の、一般的な流れについて紹介していきます。
ステップ1:契約書を準備する
取引先から提示された契約書や自社で作成した契約書を準備します。
契約書を一から作成してもらう場合には、次のステップで説明する通り、会社の基本情報や営業内容、契約目的について説明できるように準備しておきましょう。
ステップ2:会社情報や契約目的について整理しておく
会社情報や営業内容、契約目的など下記の項目について専門家に説明できるように準備しておきましょう。
- 自社の資本金や従業員数など会社の基本情報
- 相手方の資本金や従業員数など会社の基本情報
- 契約目的
- 取引内容
契約書の中で特に気になる条項や、どうしても避けたいトラブル内容などについても伝えられると、リーガルチェックを迅速に進められるでしょう。
ステップ3:リーガルチェック実施
契約書のリーガルチェックを専門家が実施します。専門家が契約書をチェックして、トラブルにつながりそうな条項や修正すべき条項をまとめていきます。
また、リーガルチェック依頼の前に、スケジュールと費用について確認しておくと良いでしょう。
ステップ4:契約書のフィードバック
専門家から契約書における問題点がフィードバックされます。
フィードバック内容を確認しながら、相手方へ修正依頼をすることが可能かについて検討しましょう。相手方への交渉を専門家が代理してくれることもあります。
このとき、専門家に言われた通りにただ修正するのではなく、気になる点があれば積極的に質問をすることが大切です。
また、リーガルチェックはあくまで法律の専門家としてのチェックに過ぎないため、ビジネスに関しては見落としている点があるかもしれません。
法律の視点とビジネスの視点には齟齬が生まれる可能性もあるので、ここは、ビジネスの専門家として契約書のフィードバックを慎重に確認していきましょう。
ステップ5:リーガルチェック終了
契約書のフィードバックにおける要望や疑問点が解消されれば、リーガルチェックは完了です。
6.契約書は事前に自分で確認してからリーガルチェックを依頼しよう
契約書のチェックポイントを紹介していきます。
リーガルチェックは、適正な契約書を締結し、安心してビジネスに没頭するために重要な意味を持ちますが、自分が何も考えなくていいという訳ではありません。
ある程度、自社で契約書のポイントを押さえた上で、問題点をまとめてから依頼した方が、適切かつ迅速にリーガルチェックを行えるでしょう。
下記の通り、作成した契約書において確認するべきポイントをまとめたので、ひとつひとつ解説していきます。
- 契約書に基本事項が入っているか
- 曖昧な表現はないか
- 公平性が保たれているか
- ビジネスの目的に沿った内容になっているか
6-1.契約書に入れるべき基本事項が入っているか
まずは、契約書に入れるべき基本事項が入っているかをチェックしていきましょう。
契約書には様々な種類があり、また取引ごとに状況も変わるので一概には言えないのですが、ほとんどの種類の契約書において必要な事項というものは存在します。
そこで、一般的な契約書に盛り込むべき事項をまとめました。契約後のトラブルを回避するため、下記事項の要素があるかどうかをまずは確認してみてください。
6-2.曖昧な表現はないか
契約書内に曖昧な表現がないかどうかを確認しましょう。
専門用語や契約内のみで使われる言葉が含まれていないかどうか、一般的な言葉であるかどうかをしっかりチェックしておく必要があります。
言葉の意味の解釈が色々できてしまうと、協議や裁判において、自分にとって不利な主張を相手方にさせる隙を与えてしまいます。
そのため、下記のチェックポイントを満たしているかどうか確認しておきましょう。
- 誰が読んでも分かりやすい内容になっているか
- 同じ意味を持つ言葉の用語が統一されているか
- 期間や金額などが曖昧な表現になっていないか
- 責任の所在が明らかになっているか
- 誤字脱字はないか
6-3.公平性が保たれているか
契約書の公平性が保たれているかどうかを確認しましょう。
相手方との関係によっては、多少不利な条件を呑んだ上で契約を交わすこともあるかもしれません。しかし、極端に不公平な契約を締結してしまうと、トラブルの際に大きな負担を背負うことになってしまいます。
そこで、契約上、ある程度の公平性が保たれているかを確認しておくことが大切です。
6-4.ビジネスの目的に沿った内容になっているか
ビジネスの目的に沿った内容になっているか確認しましょう。
特に、契約書のテンプレートを利用した場合には、実際の取引内容と乖離していることもあるので、注意が必要です。
相手方と口頭で合意した事柄について忘れずに盛り込まれているかも、慎重に確認しておきましょう。
7.リーガルチェックをお願いする専門家の選び方ポイント
リーガルチェックをお願いする際の専門家の選び方ポイントを紹介していきます。
- 弁護士がベスト
- 自分のビジネス分野の契約に詳しい
- 料金やかかる期間が明瞭
7-1.弁護士がベスト
リーガルチェックをお願いする専門家としては、弁護士がベストです。弁護士が最も法律を網羅的に理解していて、日頃から裁判所の考え方に精通しており、さらに、裁判慣れしているからです。
ただ、リーガルチェックは弁護士以外にも行政書士や司法書士が対応していることもあります。
行政書士、司法書士、弁護士それぞれの業務分野について、下記に解説したので、専門家を選ぶ際の参考にしてみてください。
行政書士 |
主に行政機関へ提出する許認可等の書類を作成し、提出する業務を担う。建設業許可申請書や会社設立関連書類など。 |
司法書士 |
主に不動産登記や商業登記といった登記業務を担う。一部簡易裁判所における代理業務も認められている。 |
弁護士 |
世の中のあらゆる紛争に関する相談や裁判代理を行なっている。業務の幅が広く、扱う法律も幅広く、基本的には紛争解決を多く扱っているため、リーガルチェックは弁護士に依頼するのがベスト。 |
7-2.自分のビジネス分野の契約に詳しい
自分のビジネス分野における契約に詳しい専門家を選ぶようにしましょう。
弁護士の業務範囲は広いので、それぞれの弁護士の専門分野は異なります。例えば、離婚案件に強い弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼するのは、適切な選択とは言えないでしょう。
自分のビジネス分野に精通している弁護士であれば、これまでの経験から幅広いアドバイスがもらえ、トラブルが起きた時の対処も迅速にしてくれるはずです。
弁護士事務所のHPなどで、リーガルチェックにおける実績を必ず確認してみてくださいね。
7-3.料金やかかる期間が明瞭
リーガルチェックの料金や期間が明瞭な専門家を選ぶようにしましょう。
料金や期間が明瞭でないと、相手方を待たせて関係が悪化したり、予想外の料金を請求されたりすることがあります。
そのため、リーガルチェックの前に、こちらのスケジュールを確認してもらった上で、見積もりをしてくれる専門家を選ぶことをおすすめします。
8.まとめ
本記事では、リーガルチェックとは何か
- リーガルチェックの重要性
- リーガルチェックを依頼する5つのメリット
- リーガルチェックを依頼する2つのデメリット
- リーガルチェックの流れ
について紹介しました。
リーガルチェックとは、契約書などを法律の専門家に確認してもらうことです。
リーガルチェックがされていないと、下記のような問題が起こる可能性があるため、ビジネスに集中するためにもリーガルチェックは必須と言えます。
- 契約書に不備があることで、金銭的なトラブルに発展し、損害賠償請求される
- 法改正に適応していない契約書を気がつかず締結してしまい、契約自体が無効になる
- 国を超えて海外の会社と契約する際、国の法律や判例についての知識がないため不利益を被る
リーガルチェックのメリットは、具体的には下記の通りです。
- トラブルを事前に回避できる
- 自社に不利な契約について事前に気が付ける
- 契約書の違法性を事前にチェックできる
- 取引内容に合わせてアドバイスがもらえる
- 弁護士と関係を築いておくことができる
リーガルチェックのデメリットは、具体的には下記の通りです。
- 金銭的負担が増える
- 契約書チェックのために時間がかかる
本記事を読むことで、リーガルチェックは何か、メリットやデメリット、流れなど必要なことを理解した上で、取引先と交わす予定の契約書などに関して、リーガルチェックをするべきかどうかを判断してもらえたなら幸いです。