会社法務

少数株主を締め出し、株主をあなた一人にする方法②【株式売渡請求を用いたスクイーズアウト】

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 あなたの会社に出資してくれた株主が、あなたの経営方針に賛成し協力してくれているのであれば、それに越したことはありません。
 しかし、株主同士の関係がうまくいっているうちはよいのですが、必ずしもそれが続くとは限りません。我々は、創業者とその他の株主で対立が生じ、会社の支配権を巡って争って内紛状態となって、会社の経営が脅かされる場面を何度もみてきました。

 会社が発行する株式の圧倒的多数をあなたが保有していれば、株主間で対立が生じても全く問題がないかといえば、そういうわけでもありません。
 それは、僅か一株しか保有していない者であっても、法律上は株主として取り扱わなければならず、株主としての様々な権利が保障されているためです(一株しか保有していなくても行使できる権利等については、起業家があらかじめ知っておくべき10の法的な知識|企業法務の勘所に記載しました)。つまり、一株でも株式を保有していれば、経営者であるあなたの責任を追及することもできますし、あなたの経営方針に反対し、これを妨げるための行動をとることもできます。そして、このようなトラブルがひとたび発生すれば、会社の本業に必ず重大な支障をきたします。

 他方、株主があなた一人しかいないという状況であれば、そのようなトラブルが発生することはありません。会社を乗っ取られるということもありません。株主があなた一人しかいないという状況は、安定的に、かつ、迅速な意思決定により会社を経営するための究極的な環境ということができるかもしれません。このように、他の株主の意思にかかわらず、強制的にこれを締め出し、株主が一人の状況を作ることを「スクイーズアウト」あるいは「キャッシュアウト」と呼ぶことがあります。

 少数株主を締め出し、株主をあなた一人にする方法①【株式併合を用いたスクイーズアウト】では、あなたが3分の2以上の株式をコントロールできることを前提に、株式の併合によるスクイーズアウトの概要及び具体的な手続について解説をしました。あなたが、3分の2以上を超えて、90%以上の株式をコントロールできる場合には、「特別支配株主の株式売渡請求」という制度を利用して、株式の併合よりも簡単にスクイーズアウトを行うことができます。

 この記事では、会社(非上場会社であることを念頭に置いています。)の経営者であるあなたが、株式の90%以上をコントロールしていることを前提に、スクイーズアウトをするための「特別支配株主の株式売渡請求」を取り上げます。株式売渡請求によるスクイーズアウトについて、書式をもとに、具体的な手続を解説しますので、すぐにでも実践することが可能です。是非参考にしてください。 

スクイーズアウトをされそうな方は、【スクイーズアウトへの対抗方法を解説ー安易に妥協しない】も参考にしてください。

2021/09/05 更新

Contents

1 株式売渡請求によるスクイーズアウトの概要

1-1 株主があなた一人となることのメリット

 少数株主を締め出し、少数株主を締め出し、株主をあなた一人にする方法①【株式併合を用いたスクイーズアウト】でも述べたところとも重複しますが、あなた以外に株主がいない状況を作り出すことのメリットを整理すると、次のとおりです。

  •  会社の経営方針について、すべてあなたの一存で決めることができ、他の株主の顔色をうかがう必要がない
  •  会社の意思決定が迅速になる
  •  株主管理に関する事務作業の軽減が可能になる
  •  株主間の対立による経営の停滞・支配権をめぐる紛争がなくなる

1-2 特別支配株主の株式売渡請求とは

 株式の併合の場合、あくまで、株式の併合を行う主体は会社であり、また、締め出される株主から株式を買い取る義務を負うのは、会社でした。
 しかし、特別支配株主の株式売渡請求の場合、手続を進めるのも、また、株式を買い取るのも、90%以上の株式を保有しているあなたが主体となります
 この制度は、90%以上の株式を保有している株主(これを「特別支配株主」と呼びます。)が、その他の株主(これを「売渡株主」と呼びます。)から、株式を買い取るというものです(会社法179条1項)。特定支配株主であるあなたが、適正な価格を提示し、かつ、会社法に定める手続に従って進める限り、売渡株主が望んでいなくても、強制的に株式を取得することができるのです。

 株式の併合の場合、株主総会の特別決議が必要ですが、特別支配株主の株式売渡請求の場合には、株主総会の決議は不要であり、株式の併合によるスクイーズアウトに比べると手続も簡易です。そのため、90%以上の株式をコントロールできる場合、スクイーズアウトの手法としてはこの株式売渡請求が選択されるのが実務的には一般的です。

会社法179条1項 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。 

2 特別支配株主の株式売渡請求を用いたスクイーズアウトの具体的な手続の解説

2-1 手続のスケジュール

 上場していない、一般的な会社を前提とすると、株式売渡請求によるスクイーズアウトについては、大まかに言えば以下の流れをたどります。
 注意すべき点は、特別支配株主であるあなたがやるべきことと、会社がやるべきことが分かれている点です。

  • ①(特別支配株主であるあなたが)株式売渡請求をすることを会社に対して通知する(会社法179条の3第1項)
  • ②(会社が)取締役会を開催し、株式売渡請求を行うことを承認する決議を行う(会社法179条の3第3項)
  • ③(会社が)特別支配株主であるあなたに対して、株式売渡請求を承認したことを通知する(会社法179条の3第4項)
  • ④(会社が)あなた以外の株主に対して、株式売渡請求を承認していること等を通知する(会社法179条の4第1項)
  • ⑤(会社が)株式売渡請求に関する資料の本店備え置き(会社法179条の5第1項)
  • ⑥予め定めた「取得日」の到来により、あなたが株式を取得し(会社法179条の9第1項)、他の株主に対して、株式の代金を支払う
  • ⑦(会社が)取得日後、株式売渡請求に関する資料の本店備え置き(会社法179条の10)

 スケジュールとしては、①~⑤を同じ日に行えば、最短20日で完了することが可能となります。もっとも、後に述べるように、株式売渡請求においては、いくらで買い取るか(公正な価格でなければなりません。)が決定的に重要ですので、事前に、株価算定を実施しておくべきです。そのため、株価算定に要する期間も踏まえておく必要があります。

会社法179条の3第1項 特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第一項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。 
会社法179条の3第3項 取締役会設置会社が第一項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。
会社法179条の3第4項 対象会社は、第一項の承認をするか否かの決定をしたときは、特別支配株主に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

会社法179条の4第1項 対象会社は、前条第一項の承認をしたときは、取得日の二十日前までに、次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める事項を通知しなければならない。
売渡株主(特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株主及び売渡新株予約権者。以下この節において「売渡株主等」という。) 当該承認をした旨、特別支配株主の氏名又は名称及び住所、第百七十九条の二第一項第一号から第五号までに掲げる事項その他法務省令で定める事項
売渡株式の登録株式質権者(特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株式の登録株式質権者及び売渡新株予約権の登録新株予約権質権者(第二百七十条第一項に規定する登録新株予約権質権者をいう。)) 当該承認をした旨

会社法179条の5第1項 対象会社は、前条第一項第一号の規定による通知の日又は同条第二項の公告の日のいずれか早い日から取得日後六箇月(対象会社が公開会社でない場合にあっては、取得日後一年)を経過する日までの間、次に掲げる事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
特別支配株主の氏名又は名称及び住所
第百七十九条の二第一項各号に掲げる事項
第百七十九条の三第一項の承認をした旨
前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

会社法179条の9第1項 株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日に、売渡株式等の全部を取得する。 

会社法179条の10第1項 対象会社は、取得日後遅滞なく、株式等売渡請求により特別支配株主が取得した売渡株式等の数その他の株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。 

2-2 具体的な手続き(書式をもとに)

2-2-1 ①(特別支配株主であるあなたが)株式売渡請求をすることを会社に対して通知する(会社法179条の3第1項)

 注意が必要なのは、特別支配株主であるあなたが、他の株主に対して直接連絡をするのではなく、まずは会社に対して通知をするとされている点です。
 会社に対して通知をする際の通知書に記載すべき事項は、会社法179条の2第1項及び会社法施行規則33条の5が定めていますが、通知書のひな型は、①特別支配株主から会社に対する通知をご参照ください。

会社法179条の2第1項 株式売渡請求は、次に掲げる事項を定めてしなければならない。
特別支配株主完全子法人に対して株式売渡請求をしないこととするときは、その旨及び当該特別支配株主完全子法人の名称
株式売渡請求によりその有する対象会社の株式を売り渡す株主(以下「売渡株主」という。)に対して当該株式(以下この章において「売渡株式」という。)の対価として交付する金銭の額又はその算定方法
売渡株主に対する前号の金銭の割当てに関する事項
株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求(その新株予約権売渡請求に係る新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合における前条第三項の規定による請求を含む。以下同じ。)をするときは、その旨及び次に掲げる事項
  特別支配株主完全子法人に対して新株予約権売渡請求をしないこととするときは、その旨及び当該特別支配株主完全子法人の名称
  新株予約権売渡請求によりその有する対象会社の新株予約権を売り渡す新株予約権者(以下「売渡新株予約権者」という。)に対して当該新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、前条第三項の規定による請求をするときは、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この編において「売渡新株予約権」という。)の対価として交付する金銭の額又はその算定方法
  売渡新株予約権者に対するロの金銭の割当てに関する事項
特別支配株主が売渡株式(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株式及び売渡新株予約権。以下「売渡株式等」という。)を取得する日(以下この節において「取得日」という。)
前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

2-2-2 (会社が)取締役会を開催し、株式売渡請求を行うことを承認する決議を行う(会社法179条の3第3項)

 会社法179条の3第3項は、特別支配株主が①の通知をした後、会社の取締役会の決議による承認を受けなければならないと定めています。
 この承認に関する取締役会の議事録については、②売渡請求承認取締役会議事録を参考にしてください。

 ここで注意すべきことは、会社の取締役であるあなたが、特別支配株主として、株式売渡請求を実施する場合、あなたは取締役会の決議に参加できないという点です(会社法369条2項)。この点は、議事録に明記しておく必要があります。

会社法369条1項 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
会社法369条2項前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

2-2-3 ③(会社が)特別支配株主であるあなたに対して、株式売渡請求を承認したことを通知する(会社法179条の3第4項)

 会社法179条の3第4項は、取締役会が株式売渡請求を承認する決議をしたときは、特別支配株主であるあなたに対して通知をすべきことを定めています。この通知に関しては、③特別支配株主に対する承認通知を参考にしてください。

2-2-4 ④(会社が)あなた以外の株主に対して、株式売渡請求を承認していること等を通知する(会社法179条の4第1項)

 会社法179条の4第1項は、取締役会が株式売渡請求を承認する決議をしたときは、特別支配株主であるあなたからではなく、会社から、取得日の20日前までに、他の株主に対して通知をすることを定めています。この通知に関しては、④売渡株主に対する通知を参考にしてください。

2-2-5 (会社が)株式売渡請求に関する資料の本店備え置き(会社法179条の5)

 会社法179条の5第1項は、④の通知の日以降、株式売渡請求の概要を記載した書面を、本店において備え置いておく必要があることを定めています。
 ここでは、株式売渡請求において、一株当たりいくらの金額で買い取るのか、その金額の相当性に関する記載が求められていますので、株価算定の内容を踏まえた記載をする必要があります。具体的に会社が準備しておくべき資料については、⑤事前開示書類を参考にしてみてください。

2-2-6 ⑥取得日

 特別支配株主であるあなたは、取得日の到来により、他の株主から全部の株式を取得することになります(会社法179条の9第1項)。
 売渡株主に対して売買代金を支払う前であっても、取得日の到来により、株式を取得することになりますが、代金の大部分が支払われないような場合には、売渡請求自体が無効であるという訴えの対象となるとも考えられますので(会社法846条の2)、定めたとおりに代金を支払う必要があります。
 これまでご紹介してきたひな形では、売渡株主から振込口座の連絡があってから、5日以内に支払うという内容にしています。

会社法846条の2第1項 株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日(第百七十九条の二第一項第五号に規定する取得日をいう。以下この条において同じ。)から六箇月以内(対象会社が公開会社でない場合にあっては、当該取得日から一年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる。 

2-2-7 ⑦(会社が)取得日後、株式売渡請求に関する資料の本店備え置き(会社法179条の10)

 取得日の後、会社は、一定の書類を備え置いておき、株主から希望があった場合には閲覧させる必要があります(会社法179条の10、会社法施行規則33条の8)。具体的に会社が準備しておくべき資料のひな型を用意しましたので、⑥事後開示書類も参考にしてみてください。

3 株式売渡請求をする場合に注意すべき3つのポイント

3-1 適正な価格を提示すること

 売渡請求の手続では、特別支配株主であるあなたが主導して買取価格を決め、他の株主から、この買取価格に異議がなければ、取得日の到来により、あなたは他の株式を取得し、株主に対して決められた買取価格を支払うことになります。
 そのため、できる限り低い金額の提案ををして、買取を進めたいところではあります。

 しかし、あまりにも低過ぎる売買価格を提示した場合には、これが「著しく不当」なものであるとして、株主から売渡請求の差止がなされる可能性もあります(会社法179条の7第1項)。
 また、そこまで極端でなくとも、売買価格に異議がある株主は、「取得日の前日までの間に」裁判所に対して、公正な価格の決定を求めることができます(会社法179条の8第1項)。その場合には、最終的には、裁判所が双方の言い分を聞いた上で、公正な価格を決定することになります
 そのため、株式売渡請求を検討するに当たっては、他の株主が納得できるよう、また、最終的に裁判所を説得できるように、公認会計士等による適正な株価算定を実施しておく必要があります

会社法179条の7第1項 次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる。
株式売渡請求が法令に違反する場合
対象会社が第百七十九条の四第一項第一号(売渡株主に対する通知に係る部分に限る。)又は第百七十九条の五の規定に違反した場合
第百七十九条の二第一項第二号又は第三号に掲げる事項が対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合

会社法179条の8第1項 株式等売渡請求があった場合には、売渡株主等は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができる。
会社法179条の8第2項 特別支配株主は、裁判所の決定した売買価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

3-2 取得日を過ぎると、一方的に撤回できない

 株式売渡請求に着手した後は、「取得日の前日まで」に会社の取締役会の承認を得た場合に限って、売渡請求を撤回することが可能です(会社法179条の6第1項及び第2項)。
 これは、裏を返せば、取得日が到来してしまえば、もはや、一方的に撤回することはできないということになります。

 売渡請求において、あなたが提示した金額に株主が不満を持ち、最終的に、裁判所が売買価格の決定をした場合、あなたが予想していたよりも大きな金額となる可能性があります。しかし、裁判所の決定した売買価格が、予想よりも高かったからといっても、もはや取得日が到来した後は、一方的に撤回をすることはできず、裁判所の決定した売買価格の支払義務を負うのです(厳密には、売買価格に年6%の利率を加算した金額です。会社法179条の8第2項)。
 このような事態を避けるためにも、慎重に株価の算定を実施するとともに、資金的な余裕を持っておく必要があります。

会社法179条の6第1項 特別支配株主は、第百七十九条の三第一項の承認を受けた後は、取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合に限り、売渡株式等の全部について株式等売渡請求を撤回することができる。
会社法179条の6第2項 取締役会設置会社が前項の承諾をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。

3-3 事前に株券を廃止する手続を行っておく

 現在の会社法では、定款において、特に「当社の株式については、株券を発行する。」等、株券を発行することを明記しておかなければ、株券を発行することはできません(会社法214条)。株券の発行とは、文字通り、物理的に、ペーパーの株券を発行することです。

 もっとも、旧法時代には、株券を発行することが原則とされていたので、設立された時期が比較的古く、定款の変更等を行っていない場合には、定款の定めとして、株券を発行することとなっている場合も散見されます。このように、意図せず株券発行会社となっている場合には注意が必要です。

 すなわち、株券発行会社においては、株式の譲渡に当たって、実際に株券の引渡を受けなければならないので(会社法128条1項)、株式売渡請求を行ったとしても、株主から株券の交付を受けることができなければ、株式取得の効力が生じないのです。株式売渡請求の相手方である株主から協力を得られず、株券の引渡を受けられないという事態は、十分に想定されるのであり、その場合には、目的を達成することができません。

 そのため、まずは自社の定款・会社謄本を確認し、株券発行会社となっている場合には、まずは、定款を変更して、株券を発行しない会社にしたうえで、売渡請求の手続に進むことが望ましいでしょう。

会社法214条 株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。

会社法128条1項 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。

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