会社法務

中小企業が最低限押さえておくべき反社会的勢力の対策4つのポイント

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 あたなの会社の取引先であるX社が、反社会的勢力と関係があるという噂が流れています。

 あなたの会社はどうしますか。

 すでに、契約を締結してしまっているし、特に会社に不利益な取引ではないので、このまま取引を継続しても問題ないと判断していたら、その判断は大きな誤りです。

 上場企業が反社会的勢力と関係を持った場合には、大きなニュースとして取り上げられていますが、これは上場企業だけの問題ではありません。

 体力のある上場企業においては、反社会的勢力と関係を持ったとしても、事業を継続していくことができますが、体力のない中小企業の場合には、会社存亡の危機に直結する問題です。

 そこで、企業を経営する上で、反社会的勢力の対策について押さえておくべき4つのポイントを解説します。

 是非、参考にしてください。

1 反社会的勢力との間では、経済合理性のある取引でも行ってはいけない

 平成19619日、政府は、犯罪対策閣僚会議幹事会申し合わせとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(以下「指針」といいます。)を公表しました。

 指針の概要は以下の通りです。

①反社会的勢力を排除していくことが企業の社会的責任の観点から重要であること

②反社会的勢力に対して、資金提供を行わないことがコンプライアンスそのものであること

③企業は、反社会的勢力による不当要求には断固拒絶すること

④反社会的勢力とは一切の関係の遮断を行うこと

 上記④の一切の関係遮断は、相手方が反社会的勢力であれば、企業にとって、取引により利益を得ることができ、経済合理性が見込める場合でも取引に応じてはいけないこと、また、すでに取引関係があるのであれば、その解消を求めるものです。

 これにより、会社は、たとえ利益のある取引であっても取引を行ってはいけないことになります。

2 暴力団排除条例

 平成22年以降、各都道府県において、暴力団排除条例(以下「暴排条例」といいます。)が制定されるようになり、平成23101日には、すべての都道府県において暴力団排除条例が制定されるに至りました。

 東京都暴排条例においては、企業に関わる部分としては、以下の規定が置かれています

  1. 事業者は、事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は疑いがあると認められる場合には、契約の相手が暴力団関係者でないことを確認するように努めること(18条1項)
  2. 事業者が、契約を締結する場合にはいわゆる暴排条項を入れるように努めること(同条2項)
  3. 事業者が、暴力団関係者に対し利益供与を行うことは禁止されていること(24条)
  4. 3に違反した場合には、勧告・公表等の行政処分(29条)がなされ、さらに悪質のものについては罰則(33条)が科せられること

 暴排条例の制定により、企業は、相手方が暴力団関係者でないことを確認する努力義務、暴排条項を導入する努力義務を負うことになりました。

 また、事業者が暴力団関係者に対し利益供与を行うことは禁止され、罰則まで科せられるようになっています。

3 反社会的勢力と取引をした場合のリスク

 以上のとおり、反社会的勢力との取引をすることを拒絶することを求めておりますが、それでは、反社会的勢力と取引をした場合には、どのようなリスクがあるでしょうか。

3-1 取引先からの取引拒絶

 反社会的勢力と関係を持っている会社に対しては、取引自体を行わない、あるいは判明した時点で、取引を打ち切るという会社が増えています。

 取引先からみれば、反社会的勢力と関係を持っている会社、すなわち、あなたの会社自体が反社会的勢力に該当する可能性があるからです。

 政府指針によれば、あなたの会社が重要な取引先であっても、取引を解消しなければならならず、そのまま取引を行っていると、自らの会社のレピュテーションリスク等につながるのです。

 特に、取引先が上場企業の場合、取引をしていること自体が、大きなレピュテーションリスクにさらされるので、取引を打ち切られる可能性が高いといえます。

3-2 金融機関からの一括請求及び融資拒否

 銀行取引約定書には、企業が暴力団員等と関係を有している場合には、期限の利益を喪失させる旨の条項が規定されている場合がほとんどです。

 金融機関が当該条項に該当すると判断した場合には、期限の利益を喪失させたとして、あなたが金融機関から借入をしている全額について一括請求をされる可能性があります。

 また、一括請求がされなかったとしても、暴力団員等と関係を有していることが判明した場合には、融資の継続を受けることができなくなります。

 以上からもわかるとおり、反社会的勢力と取引をしていることが明らかになった場合、事業活動に重大な影響を及ぼし、会社存亡の危機に直面する可能性があります

 

4 反社会的勢力との取引の解消方法

 それでは、反社会的勢力の関係を持たない、関係を遮断する場合には、どのようにすればよいのでしょうか。

4-1 契約締結前-契約自由の原則

 取引先と新規に取引をする場合、誰と契約をするかは自由であるという契約自由の原則が働きます。

 そこで、契約する際には、新規取引先が反社会的勢力に該当するかどうかを調査して、グレーの場合には、契約をしないことが大切です。反社会的勢力に該当するどうかを調査する方法としては、以下の方法があります。 

反社会的勢力に該当するかどうかを調査する方法

  • インターネット検索

 暴力団員やその共犯者の検挙情報の調査をします。

  • 外部データベースの利用

 業界によって、業界団体でデータベースを作成しているところもありますので、データベースがある場合には、データベースに照合します。

  • 暴追センターへの相談

 暴力団排除活動を支援する組織として、各都道府県には、暴力団追放運動推進センター(暴追センター)が設置されています。分からない場合には、暴追センターに相談をするというのもの一つの手段です。

 調査をして、少しでも怪しいと感じたら、契約自由の原則により、取引を拒絶します

4-2 暴力団排除条項の導入

 新規に取引をする際には、暴力団排除条項(暴排条項)を導入した契約書を作成します。

 前述のとおり、暴排条項の導入は東京都暴排条例においても努力義務として規定されているものです。

 暴排条項を導入した契約書を締結するということは、取引開始前においては、取引の相手方が暴力団関係者でないことを確認するのに役立ちますし、取引開始後に判明をした場合に、暴排条項に基づき、取引を解消することができます。

 契約書に暴排条項を入れることに損はありませんので、積極的に入れるようにしましょう。

 具体的な条項としては、取引の相手方が暴力団関係者でないことを確認する条項及び取引開始後に暴力団関係者であることが判明した場合には契約を解除することができる旨の条項を定めるのが一般的です。

 暴排条項のサンプルを準備しましたので、参考にしてください。

【暴排条項サンプル】

第○条 反社会的勢力の排除

1 甲及び乙は、相手方(役員等又は経営に実質的に関与している者を含む。以下同じ。)が反社会的勢力(暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、政治活動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他これらに準ずる者)であることが判明した場合、その他、相手方が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているときには、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。

2 甲及び乙は、相手方が自ら又は第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、取引に関して脅迫的な言動をし又は暴力を用いる行為、風説を流布し偽計又は威力を用いて甲の信用を棄損し又は甲の業務を妨害する行為、その他これらに準ずる行為をした場合には、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。

 

4-3 契約締結後-契約の解除又は合意解約

契約締結後の場合には、契約書に暴排条項があるどうかによって、対応が変わってきます。

① 暴排条項がある場合

 暴排条項に基づき契約を解除します。

② 暴排条項がない場合

 取引先と合意をして解約をするか、契約書のいわゆる包括条項に基づいて解除するかどうかを検討します。

 どのような形で、契約を解消するかどうかについては、法的リスク等も考え、検討する必要がありますので、弁護士に相談をした方がよいでしょう。

 

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