会社法務, 会社運営

【リスクマネジメント】内部告発への対策〜事前予防・初動対応〜

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昨今のコンプライアンス意識の高まりを受けて、企業の不祥事やその後の対応に対する世間の目は一層厳しくなっています。

もっとも、何らかの不祥事が発覚した場合においても、その対応の如何によって、企業の存続を危うくする重大なダメージを残す会社もあれば、迅速・誠実な対応により逆に企業イメージをプラスに変えることに成功する会社もあります

このような不祥事対応の成否は、ほぼ初動で決定されるといっても過言ではありません

今回は、不祥事発覚の発端となることの多い内部告発を例に、事前対策としての内部通報制度の整備から、外部に告発された場合の対処法までを解説します。

皆さんの会社におかれましても、転ばぬ先の杖の話として、ぜひ参考にされてください。

 

1 公益通報者保護法と内部通報制度の必要性

1-1 総論

もしも、あなたの会社において、法令に違反する事実(以下「不祥事」といいます。)が存在した場合において、従業員がこれを内部告発としてマスコミ等へ情報提供した場合、会社としては、何らの事前準備を行う間もなく、世間からのバッシングに晒されることとなります。

そのため、仮に不祥事が存在する場合においても、社内において適切に情報共有がなされ、不祥事にかかる事実を是正することができるならば、これが望ましいことは言うまでもありません。

そこで、本項では、公益通報者保護制度の解説に加え、内部通報制度の整備について説明します。

 

1-2 公益通報者保護法

かつては、企業の不祥事を告発した従業員を左遷したり、場合によっては解雇したりするなど、不利益に取扱うケースが散見されました。

しかし、これでは企業の不祥事に気付いた従業員が安心して当該不祥事の告発を行うことができず、結果として、不祥事発覚の契機が失われてしまい、社会全体として不利益となってしまいます。

そこで、平成18年4月に公益通報者保護法が施行され、一定の要件のもと、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる事実について、これを通報した従業員等を保護することが定められました。

もっとも、同法は、行政機関やマスコミ等の外部者に対して通報を行った従業員を常に保護するものではありません

同法は、一次的には内部通報を通じた社内の自浄作用による是正を予定していることから、通報者保護の要件として、①行政機関への通報の場合、通報対象事実の発生が「信ずるに足りる相当の理由がある場合」に限定され、②マスコミ等の外部者への通報の場合には、①に加えて「解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合」や「当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」などの条件を満たす場合に限定されています。

(解雇の無効)

第三条 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。

一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該労務提供先等に対する公益通報

二 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報

三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

ホ 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 

したがって、従業員に対しては、外部への通報を行った場合には必ずしも常に保護されるものではないことを正しく理解させた上で、まずは社内における通報を促すことが望ましいといえます

次に、適正に機能する内部通報体制の整備について説明します。

 

1-3 内部通報体制の整備

上場企業を対象とするコーポレートガバナンス・コード(原則2−5)においては、「内部通報に係る適切な体制整備」として、経営陣から独立した内部通報窓口の設置を行うとともに、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律の整備が求められています。

コーポレートガバナンス・コード 原則2-5 内部通報

 上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適 切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。

 

補充原則 2-5①

上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備 すべきである。

 

また、上場企業以外についても、例えば、消費者庁が定める「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」においては、経営幹部を責任者として部署間横断的に通報を取扱う仕組みを整備することや、これを適切に運用すること、経営幹部の役割を内部規程等において明文化することなどの体制整備に加え、通報窓口及び受付方法の十分かつ継続的な周知が求められています。

併せて、通報窓口を法律事務所や民間の専門機関等に委託するなど、経営上のリスク情報の把握に努めることが適当であるとされています。

 

参照:消費者庁「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」

 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/pr/briefing_session/guideline/pdf/setsumeikai_170705_0005.pdf

 

これらを踏まえた内部通報体制整備のポイントは、次のとおりです。

①仕組みの整備

・社内規定において、内部通報制度に関する責任者や窓口のほか、通報者への不利益取扱いの禁止、秘密保持の徹底、利益追求と企業倫理が衝突した場合には企業倫理を優先するべきことなどを定めて、従業員に明示しましょう。

②通報窓口の整備

・通報窓口(総務部、コンプライアンス部、監査役、社外の弁護士事務所等)、受付の方法(専用の電話番号やメールアドレス等)を明確にし、従業員へ周知しましょう。

・通報窓口の利用者は、従業員(契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員等を含む)に限定せず、役員、子会社・取引先の従業員、退職者等による通報も可能とすることが望ましいといえます。

③利用促進へ向けた施策

・社内通達、社内報、電子メール等で広報を実施する、定期的に研修や説明会を開催すること等により、経営幹部及び全ての従業員に対し、十分かつ継続的に周知を行うことが必要です。

④通報者の秘密保持

・通報者の所属や氏名等が職場内に漏れることは、それ自体が通報者の重大な不利益となるばかりか、内部通報制度自体への信頼性を損なうことになりかねないことから、情報共有が許される範囲を必要最小限に限定することや、通報者の特定につながり得る情報は通報者の書面や電子メール等による明示の同意がない限り開示しないことなどに注意が必要です。

・匿名の通報も受け付けることとしましょう。ただし、匿名の通報であっても、通報者と通報窓口担当者が双方向で情報伝達を行い得る仕組みを導入することが望ましいといえます。

 

1-4 内部通報制度の活用

このように、内部通報体制を整備し、不祥事の芽を社内で早期に摘み取ることで、マスコミ等への内部告発による重大なダメージを事前に回避することが肝要といえます。

 

2 内部告発がなされた場合の初動対応 

2-1 事実関係の調査 

社内における内部通報が行われることなく、従業員が直接、外部の行政機関やマスコミ等へ内部告発を行なった場合、会社としては、行政機関による調査やマスコミの報道によって、不祥事の存在を青天の霹靂の出来事として知ることとなるケースが往々にしてあります。

このような場合の対応として、まず行うべきは事実関係の調査です

指摘を受けている不祥事について、当該事実が真に存在するのか、それは違法ないし不当と評価されるべきものであるのか、当該事実はどのレベル(現場、管理者、経営陣等)まで把握していたのかなどを、書類や電子メール履歴の調査、関係する従業員等へのヒアリングの実施などにより確認することが重要となります。

また、対外的な公表(会見やリリース)を要するようなケースにおいては、調査結果に対する信頼性を担保するため、社内(顧問弁護士を含む)の調査チームによる調査のほか、外部の専門家により構成される第三者委員会による調査を実施することが望ましい場合もあります。

 

2−2 社外への公表

事実関係の調査に加え、適時に対外的な公表を行うことの検討も必要となります。

もっとも、十分な準備がなされないままの拙速な会見は、かえって世間からの批判の的となるケースもあるため注意が必要です

例えば、記者からの質問に対して「現在調査中である」と繰り返すのみの会見や、全ての責任を現場に押し付けるような印象を与える会見であっては、その会見における対応自体が二次的なバッシングの対象となりかねません。また、誠意が感じられない謝罪会見などはもってのほかですが、慣れない会見の場において、「見る人にどのように映るか」まで意識した対応を行うことは、決して容易なことではありません

加えて、被害者がいるケースでは、最近の某アイドルグループの例のように、会見中に当該被害者がSNSを通じてタイムリーに会見内容に対する批判を行うことも容易になっています(このケースでは、事前に当該被害者への説明や意見交換が不足していたなど別の要因もあるようですが。)。

そのため、ケースバイケースではありますが、初動としては、書面によるリリースで、世間を騒がせていることへの謝罪とともに、今後調査を実施する旨及びそのスケジュール(調査委員会や第三者委員会を設置する場合にはその旨も)を公表するにとどめる方がよいことも多いと思われます。

 

2-3 最近の動向を踏まえて

近年では、SNSの普及により、個人が世界へ向けた発信を容易に行うことが可能となりました。これは同時に、企業にとっては、不都合な事実を隠したり、発覚した不祥事に対して不十分な調査しか行わないなど対応を誤れば、甚大な風評被害を招き、企業の存続を危うくしかねない時代でもあるといえます

経営者の皆さんには、このような時代の変化を十分にご理解いただき、必要に応じて専門家の意見も交えながらの適時適切な対応を心がけていただきたいと思います。

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